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2006年11月01日
サイエンティフィック・アメリカンの鏡ニューロン特集
Scientific American [サイエンティフィック・アメリカン] は、さまざまな分野の第1人者がそれぞれの研究について分かりやすい英語で解説する月刊誌です。この雑誌の2006年11月号にミラー・ニューロンの特集が載り、自閉症との関連も大きく採り上げられました。ただし、 "Broken Mirrors" [割れた鏡] という題名が使われていたりして、自閉症を個性や才能として考える人にとっては認めがたい視点かもしれません。
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2006年09月07日
英: 脳内の遠距離回線が繋がりにくい
自閉症児の脳内を電話回線にたとえてみると、地域回線が密なのに対して遠距離回線が繋がりにくい状態にあるという見方が『タイム』誌の特集の中で触れられていました。この遠距離回線に関する研究を、米国のネット新聞で4月に発表された記事までさかのぼって紹介します。
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2006年02月05日
大きいのは大脳皮質: 自閉症児の脳
ノースキャロライナ大学チャペルヒル校で行なわれた調査の結果、自閉症児の大脳皮質が大きめであると確認されました。報告書は論文として、2005年12月、米国医師会が発行している精神医学専門誌に掲載され、記者会見も行なわれました。
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2005年12月24日
自閉症児のミラー・ニューロンが機能しない
ヒトやサルの脳で、作業をしているときに電流が走るだけでなく、誰か別の人が同じ作業をしているのを見ているときにも同じように電流の走る箇所があります。ここは観察と模倣を行なうときに重要な役割を果たす神経が存在する箇所と考えられており、ミラー・ニューロンと呼ばれています。
UCLA (カリフォルニア大学ロサンジェルス校) で医学や心理学を扱っているいくつかの研究機関が協力し、自閉症児の脳内でミラー・ニューロンがどう作用しているかを調べました。続きを読む
UCLA (カリフォルニア大学ロサンジェルス校) で医学や心理学を扱っているいくつかの研究機関が協力し、自閉症児の脳内でミラー・ニューロンがどう作用しているかを調べました。続きを読む
2005年10月30日
2005年10月10日
MITの自閉症研究
10月1日に発表された記事です。Massachusetts Institute of Technology、[マサチューセッツ工科大学]、通称MITは技術系の大学ですが、最新の機器を使って脳や認知科学の研究も盛んに行なわれています。
このMITで、サイモンズ基金という財団から提供された資金で、自閉症の共同研究が始まるそうです。沢山の遺伝子による相互作用や、さまざまな脳の機能の研究などが多角的に行なわれるようです。
研究計画の中には、利根川教授の研究班も入っています。脆弱Xと自閉症に共通する二つの遺伝子がどういう相互作用を起こしているかを調べるそうです。
このMITで、サイモンズ基金という財団から提供された資金で、自閉症の共同研究が始まるそうです。沢山の遺伝子による相互作用や、さまざまな脳の機能の研究などが多角的に行なわれるようです。
研究計画の中には、利根川教授の研究班も入っています。脆弱Xと自閉症に共通する二つの遺伝子がどういう相互作用を起こしているかを調べるそうです。
2005年05月22日
UCSD: 自閉症児の頭囲 2004
UCSDのエリック・クールシェンヌ教授 (Ph.D) が行なっている自閉症児の頭囲に関する研究のまとめが2004年に発表されています。UCSDでの調査だけでなく、米国各地や日本の研究者によって行なわれた調査報告もふまえ、総まとめ的な内容です。
自閉症児の集団と定型発達の子どもたちの集団を比較したばあい、自閉症児の頭囲がかなり大きめな傾向にありますが、大きくなる時期なども分かってきました。産まれたときの頭囲は平均か、やや小さめで、生後半年から1歳代の時期に急速に大きくなり、その後は止まってしまう傾向にあります。
行動や発達において自閉症の症状が見られるのは、頭囲が大きくなってからのようです。赤ちゃんの頭囲に注目することは、早期発見の手がかりにもなります。
定型発達の子どもたちも乳児期に頭が急速に大きくなりますが、自閉症児の集団ほどではなく、そのあとも青年期まで少しずつ頭が大きくなります。一方、自閉症児の集団では、1歳代の時期に大きくなったあと、頭囲はほとんど変わりません。青年期になって、定型発達の子どもたちに追いつかれます。
MRIを使って調査で、脳のどの部分が大きくなるのかも分かっています。自閉症児の脳は、前頭葉と側頭葉が大きめです。
下記のリンクは論文要旨ですが、この出版社と契約している大学の図書館にあるコンピュータなどであれば、全文を閲覧できます。PDFです。個人で閲覧するばあい、有料です。
この論文から判断すると、頭囲が大きくなるのは、脳が大きくなった結果のようです。
自閉症児の集団と定型発達の子どもたちの集団を比較したばあい、自閉症児の頭囲がかなり大きめな傾向にありますが、大きくなる時期なども分かってきました。産まれたときの頭囲は平均か、やや小さめで、生後半年から1歳代の時期に急速に大きくなり、その後は止まってしまう傾向にあります。
行動や発達において自閉症の症状が見られるのは、頭囲が大きくなってからのようです。赤ちゃんの頭囲に注目することは、早期発見の手がかりにもなります。
定型発達の子どもたちも乳児期に頭が急速に大きくなりますが、自閉症児の集団ほどではなく、そのあとも青年期まで少しずつ頭が大きくなります。一方、自閉症児の集団では、1歳代の時期に大きくなったあと、頭囲はほとんど変わりません。青年期になって、定型発達の子どもたちに追いつかれます。
MRIを使って調査で、脳のどの部分が大きくなるのかも分かっています。自閉症児の脳は、前頭葉と側頭葉が大きめです。
下記のリンクは論文要旨ですが、この出版社と契約している大学の図書館にあるコンピュータなどであれば、全文を閲覧できます。PDFです。個人で閲覧するばあい、有料です。
この論文から判断すると、頭囲が大きくなるのは、脳が大きくなった結果のようです。
2005年05月02日
希望の贈り物: 自閉症脳組織プログラム
死亡した自閉症児・自閉症者およびその家族の脳組織を研究に提供するプログラムが Autism Brain Tissue Program: The Gift of Hope です。
米国の政府機関が提供する資金を使い、米国自閉症協会 (ASA)、NAAR (National Alliance for Autism Research) [自閉症の研究を支援する国民連合、通称ナール]、UCデイヴィス校MIND研究所の共同プロジェクトとして運営されています(About the Program)。対象は北米に居住する当事者とその家族です。本人か近親者の許可に基づいて事前登録を行ないます。死亡事故があったらすぐに電話で連絡し、最寄りの医療機関において、数時間以内に脳組織の採取が行なわれます(Donner Information & Registration)。すでに20をこえる研究プロジェクトが始まっており、結果が発表されたものもあります(Research Projects)。
勿論、提供された脳組織を利用する研究者も募集しています。
スペイン語による情報もあります。
死亡した自閉症者や家族の脳組織を研究のために提供するという行為に不自然さや抵抗を感じる人もいます。そういう意見も尊重しつつ、提供を決意した人たちの意見も掲載されています。自閉症に関わる研究をしているかたは、是非ごらんください(Memories of Hope)。
米国の政府機関が提供する資金を使い、米国自閉症協会 (ASA)、NAAR (National Alliance for Autism Research) [自閉症の研究を支援する国民連合、通称ナール]、UCデイヴィス校MIND研究所の共同プロジェクトとして運営されています(About the Program)。対象は北米に居住する当事者とその家族です。本人か近親者の許可に基づいて事前登録を行ないます。死亡事故があったらすぐに電話で連絡し、最寄りの医療機関において、数時間以内に脳組織の採取が行なわれます(Donner Information & Registration)。すでに20をこえる研究プロジェクトが始まっており、結果が発表されたものもあります(Research Projects)。
勿論、提供された脳組織を利用する研究者も募集しています。
スペイン語による情報もあります。
死亡した自閉症者や家族の脳組織を研究のために提供するという行為に不自然さや抵抗を感じる人もいます。そういう意見も尊重しつつ、提供を決意した人たちの意見も掲載されています。自閉症に関わる研究をしているかたは、是非ごらんください(Memories of Hope)。
2005年04月23日
UCSD: 自閉症とミラー・ニューロン
10人の自閉症者の脳波を調べ、同じ年齢・性別で定型発達である人たちの脳波と比較したとき、自閉症者の方でミラー・ニューロンのはたらきが不充分であるという傾向が観察されました。
ミラー・ニューロンというのは、サルの脳に電極を差し込んで行なわれる実験の最中に偶然発見されたもので、サルが自分で動作をしているときに活動しているだけでなく、人の動作を観察しているときにも活動する部分です。模倣やコミュニケーションを行なう時に、このニューロンが何らかのはたらきを担っているのかもしれません。
実験が行なわれたのはカリフォルニア大学サンディエゴ校にある神経科学研究所です。(ただし、以前に紹介してクールシェンヌ教授の研究室とは別のグループのようです。) 博士課程に在学する大学院生リンゼイ・オーバーマンさんが実験の中心になりました。自閉症者の脳に電極をさしこむことはできないので、かわりにEEGという方法で脳波を調べました。対象になったのは、比較的IQの高い自閉症の子どもや大人、あわせて10人です。
何もしていないときに出ているミュー波が、自分で何かしているときには止まります。定型発達の人のばあい、他人の動作を観察しているときにもこのミュー波がとまります。これに対して、自閉症の10人は、自分の動作でミュー波がとまっても、他人の動作を観察しているときにとまりませんでした。
今回の発見が、将来の早期発見や教育的支援の役に立つ可能性はあります。
論文は専門誌への掲載が予定されています。米国ではいくつかの報道機関がこの報告を採り上げています。以下のリンクはUCSDの広報誌に載ったものです。
ミラー・ニューロンというのは、サルの脳に電極を差し込んで行なわれる実験の最中に偶然発見されたもので、サルが自分で動作をしているときに活動しているだけでなく、人の動作を観察しているときにも活動する部分です。模倣やコミュニケーションを行なう時に、このニューロンが何らかのはたらきを担っているのかもしれません。
実験が行なわれたのはカリフォルニア大学サンディエゴ校にある神経科学研究所です。(ただし、以前に紹介してクールシェンヌ教授の研究室とは別のグループのようです。) 博士課程に在学する大学院生リンゼイ・オーバーマンさんが実験の中心になりました。自閉症者の脳に電極をさしこむことはできないので、かわりにEEGという方法で脳波を調べました。対象になったのは、比較的IQの高い自閉症の子どもや大人、あわせて10人です。
何もしていないときに出ているミュー波が、自分で何かしているときには止まります。定型発達の人のばあい、他人の動作を観察しているときにもこのミュー波がとまります。これに対して、自閉症の10人は、自分の動作でミュー波がとまっても、他人の動作を観察しているときにとまりませんでした。
今回の発見が、将来の早期発見や教育的支援の役に立つ可能性はあります。
論文は専門誌への掲載が予定されています。米国ではいくつかの報道機関がこの報告を採り上げています。以下のリンクはUCSDの広報誌に載ったものです。
2005年04月10日
UCSD: 自閉症者の脳の研究
カリフォルニア大学サンディエゴ校 (University of California, San Diego)、通称UCSDの神経学科のエリック・クールシェンヌ (Eric Courchesne) 教授 (Ph.D) は、長年、さまざまな方法を駆使して、自閉症の子どもや大人の脳を研究し、先駆的な発見を続けてきました。
自閉症が心理的な原因によるものではなく、生物学的な原因による症候群で、脳に特徴があることを実際に発見し、世間に示したのはクールシェンヌ教授の研究室であると言ってさしつかえないでしょう。自閉症児が千人に一人とされていた時代から研究を続けているので、大学の教授紹介頁でまだ千人に一人とおっしゃっているのは更新忘れでしょうか? (大きな大学の公式頁には、こういうこともあります。)
これまで学会や専門誌に成果を報告し続けてきたクールシェンヌ教授ですが、最近は Center for Autism Research [自閉症研究センター] として独自のホーム頁から情報発信も始めています。画像も交え、分かりやすい英文で説明がされており、自閉症と脳の関係に興味がある人にとっては参考になる点が多いです。
頭囲が非常に大きめであることを発見したのは、最近の研究で特に注目されている点です。巻き尺という最もローテクな方法で沢山の子どもたちの頭囲を測り、生後6から14ヶ月の期間に頭が急激に大きくなる傾向を確認しました。これは自閉症の子どもたちと定型発達の子どもたちの集団を比較したときに見られる傾向なので、個人的な例外もあります。頭が小さい自閉症児もいれば、頭が大きい定型発達の子もいます。自閉症児の中では重度の子の方が頭は大きめの傾向にあります。
MRI (Magnetic Resonance Imaging)、つまり磁気反響画像というハイテクな方法で頭の内部も調べ、大脳が大きくなっていることや小脳が小さくなっていることも確認されています。大脳でも特に大きくなるのは前頭葉、リンク先の画像では薄紫の部分です。
自閉症が心理的な原因によるものではなく、生物学的な原因による症候群で、脳に特徴があることを実際に発見し、世間に示したのはクールシェンヌ教授の研究室であると言ってさしつかえないでしょう。自閉症児が千人に一人とされていた時代から研究を続けているので、大学の教授紹介頁でまだ千人に一人とおっしゃっているのは更新忘れでしょうか? (大きな大学の公式頁には、こういうこともあります。)
これまで学会や専門誌に成果を報告し続けてきたクールシェンヌ教授ですが、最近は Center for Autism Research [自閉症研究センター] として独自のホーム頁から情報発信も始めています。画像も交え、分かりやすい英文で説明がされており、自閉症と脳の関係に興味がある人にとっては参考になる点が多いです。
頭囲が非常に大きめであることを発見したのは、最近の研究で特に注目されている点です。巻き尺という最もローテクな方法で沢山の子どもたちの頭囲を測り、生後6から14ヶ月の期間に頭が急激に大きくなる傾向を確認しました。これは自閉症の子どもたちと定型発達の子どもたちの集団を比較したときに見られる傾向なので、個人的な例外もあります。頭が小さい自閉症児もいれば、頭が大きい定型発達の子もいます。自閉症児の中では重度の子の方が頭は大きめの傾向にあります。
MRI (Magnetic Resonance Imaging)、つまり磁気反響画像というハイテクな方法で頭の内部も調べ、大脳が大きくなっていることや小脳が小さくなっていることも確認されています。大脳でも特に大きくなるのは前頭葉、リンク先の画像では薄紫の部分です。