2005年11月26日

コクラン: 米国での報道

MMRワクチンの安全性に関するコクラン共同計画による発表について、今回は保健関係のニュースを扱っている Health Behavior News Service という米国のネット新聞に載った記事を紹介します。



"Newest Study Finds No Link Between MMR Vaccine and Autism" [最新の研究でMMRワクチンと自閉症の関連性は全く発見されず] という見出しでも分かるとおり、自閉症との関係を否定する立場の報道ですが、文章を丁寧に読むと、100パーセント確実な調査というわけではないことを認めており、この立場に反対する医学博士の意見も紹介しています。

又、この記事では始めの方で水銀論争にも触れ、それが信頼性の高い研究によって否定されていると述べ、MMRワクチンには水銀が入っていないことも述べています。
この記事に引用されているコクラン共同計画の発表によると、この混合ワクチンの効果は検証されておらず、それぞれの単独ワクチンの効果が確認されていることに依拠して、混合ワクチンも効果的だろうとコクランの委員会では考えているようです。

自閉症との関連については98年のランセットに載った論文と接種率の低下、麻疹の流行があり、MMRワクチンの安全性に関する集中的な研究が世界各地で行なわれ、自閉症や消化器疾患との関連性を確認できず、共著者の大部分が2004年に撤回声明を出したと、今回の記事は述べています。そして、コクラン共同計画の発表は、そういったこれまでの積み重ねに新たな重みを加えるものだと主張します。

コクランの委員会では139の研究報告を分析し、そこから最も質の高い31の報告を選びました。そのうち10報は、数百から50万人を越える規模で長期的な副作用を調べた報告で、米国、英国、デンマーク、フィンランドで実施された調査の結果です。

MMRワクチンの副作用として、発熱や皮膚・関節に短期的な症状が見られたことと、非常に稀な例として出血や発作が確認されました。それでも、自閉症やクローン病との関連性について信頼できる証拠は全く出てこなかったと述べられています。

今回の調査の限界は、コクラン共同計画で普段扱われているような、同じ条件で二つの集団を比較したデータが不充分なことのようです。それでも、さまざまな条件、さまざまな実験デザインで同様の結果が一貫して出てくるばあい、その結果が本当だと判断するのは理にかなっていると、今回の発表の著者は述べているそうです。

今回の報道では、大規模な総人口調査だけで納得しない少数派の声として、お孫さんが自閉症であるエドワード・ヤズバーク博士の声も紹介しています。水銀を解毒する機能が弱いごく一部の乳幼児に水銀入りのワクチンが注射され、そのあとMMRの混合ワクチンを接種したばあい、複数の病原体によるストレスに体が耐えきれないという意見です。それでヤズバーク博士は混合ワクチンより単独ワクチンを薦めています。

これに対して、単独ワクチンを何回かに分けて接種する行為は、結果的に接種の時期を遅らせ、伝染病に感染する確率を高めるという米国政府機関の主張も紹介されています。特に、MMRのRに相当する風疹のウイルスは自閉症の原因にもなると政府機関は述べています。

又、コクラン発表の著者の一人によると、予防接種は実施前にその効果を検証する大がかりな調査を行なうことができず、実施してからその結果を振り返ることになるので、共通の基準として副作用の症状を定義した登録システムが必要だと述べられています。

最後に、この発表の共著者であるトム・ジェファソン博士が、MMRワクチンを製造している会社に対する訴訟対策のチームに助言する仕事をしていたこと、つまり発表で扱っているテーマに関して金銭的なつながりがあることを、今回の報道では述べています。
posted by iRyota at 08:09| Comment(0) | TrackBack(1) | MMRワクチン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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