そういう無料公開論文の一つで、米国ニュージャージー州のブリック・タウンシップという町で行なわれた大がかりな調査報告があります。これは自閉症の発症率について、それまでの認識を改めるきっかけとなった報告です。米国小児医学会 (AAP) で発行しているPediatricsの2001年11月号に載りました。
調査は、学校や医療機関などの記録を調べ、広告による申告を呼びかけるなどして、98年の時点で3歳から10歳の自閉症児を徹底的に捜し出し、そのデータを集積するという方法です。診断基準はDSM4ですが、レット症候群と小児崩壊性症候群は除外されました。
結果は、アスペルガーなど軽度のタイプを含む自閉症スペクトラムの子が子ども1000人のうち6.7例 (150人に一人)、そのうち73%が男子でした。狭い意味での自閉症は、子ども1000人のうち4例 (250人に一人) でした。人種のうちわけは、その町の全人口における比率と同じでした。
この調査で興味深いのは顔つきの特徴や、退行例の申告が入っていることです。
自閉症スペクトラムに該当する子どもの9%が、100人のうち上位3パーセント未満に入るほど頭が大きく、逆に小頭症は皆無でした。顔に何らかの特徴があった子は30% (13人) です。そのうち、片耳か両耳の形の異常が7人、皮膚の異常が4人、鼻が二人、手が二人、眼が二人、舌が一人でした。この子たちの写真とヴィデオを観た専門家によると、遺伝的な異常は認められませんでした。
覚えた言葉や技能が消失するなどの退行が申告された例は24%で、退行に気づいた時期は生後12ヶ月から18ヶ月でした。
Jacquelyn Bertrand, Audrey Mars, Coleen Boyle, Frank Bove, Marshalyn Yeargin-Allsopp, and Pierre Decoufle. (2001.) "Prevalence of autism in a United States population: The Brick Township, New Jersey, investigation." Pediatrics 108, November. Pp. 1155-1161.