英国出身でカナダのマッギル大学付属モントリオール子ども病院に勤めているエリック・フロンボン博士によるものです。内容はスニティ・チャクラバルティ博士との共著として、すでに発表されている論文と同じです("The Epidemiology of Autism Spectrum Disorders")。
これはイングランド中部で行なわれた早期発見の結果をもとに、自閉症の発症率を割り出したものです。乳児の定期検診で発達の遅れが疑われる赤ちゃんを見つけ出し、何度も検査をして自閉症やそれに類する症候群の有無を確かめました。検査に使ったチェックリストはADOSとADI-Rと呼ばれるもので、最終的にはDSM4の基準にてらして診断が行なわれました。
対象になったのは、1996年から98年に生まれた幼児1万903人で、調査の時点では4歳から6歳でした。そのうちPDD (広い意味での自閉症) に該当したのは64人です。率にすると1万人のうち58.7人です。狭い意味での自閉症は1万人のうち22.0人で、軽度の自閉症スペクトラムは1万人のうち36.7人です。
ちなみに、フロンボン博士たちが同じ地域で行なった過去の調査では、92年から95年の期間に生まれた子どもたち1万人のうち、PDDが62.6人でした。今回の結果と同じぐらいです。
こういった結果をふまえ、予防接種がらみで自閉症の激増を主張する声に対し、増えたように見えるのは診断基準を拡げたせいではとフロンボン博士たちは考えています。80年代のデータと比べてどう違うかが気になるところですが、80年代までに行なわれた調査では軽度のタイプを含めていないので、今回のデータと比較すべきでないとフロンボン博士たちは主張しています。
いずれにしても、92年以降のイングランドで生まれた子どもたち1万人のうち、何らかの自閉性症候群に該当する子どもたちは60程度ということになります。
1万人のうち58.7人というのは、言い換えれば170人に一人です。狭い意味での自閉症が1万人のうち22人というのは455人に一人です。