2005年11月06日

Autism2005: 言語と自閉症

言語に関する分科会での発表は二つです。オランダのライデン大学イナ・ファン・ベルケラール-オンネス教授による感覚と言語とコミュニケーションに関する考察、それから米国マサチューセッツ大学ヘレン・テイガー-フラスバーグ教授による幼児期の言語とコミュニケーション不全についてです。
ベルケラール-オンネス教授の発表は、自閉症児の言語に関する沢山の研究報告をふまえ、さまざまな仮説の中で、いわゆる「こころ」の理論説よりも、五感を通して入ってくる沢山の信号を総合的に処理する機能が未発達なせいだという仮説の方が矛盾は少ないと考えているようです。要するに、大まかな全体像を把握するより、部分的・断片的な点に注目しやすい自閉症児の性質が、言語にあらわれているというわけです。ただし、この仮説で説明できない点が存在することもベルケラール-オンネス教授は認めています。それでもこの観点から自閉症児の言語や行動のかなり多くを説明できるそうです。たとえば、特定の単語や文から意味 (大まかな全体像) を抽出せず、単語や文のまま記憶するため、自分から言葉を発するときにもオウム返しが多くなると考えられます。絵などを使って視覚的に理解させるばあいでも、絵のシンボル的な使用は困難が予想されることもあるそうです。

テイガー-フラスバーグ教授によると、自閉症児の集団をその言語発達から見たばあい、一般的な診断基準では分類できないいくつかのサブタイプに分かれるそうです。教授の勤務しているマサチューセッツ大学では、早期に自閉症スペクトラムと診断された58名の幼児を対象に、5年間の発達の様子を調べています。どの子もABAやフロアタイムによる早期介入を受けています。今回はその調査の途中で分かったことを報告しています。意外だったのは、対象になった子どもたちの中で、無発語の子が全体の2割だったことです。これまでの報告よりずっと少ない比率は早期介入の効果によるものかもしれません。共同注視の有無が言語発達の予測に使えなかったのも、訓練の結果かもしれません。バブバブと言った赤ちゃん特有の発音が見られなかった子は、そのあとも無発語の状態が続く確率が高いそうです。いずれにしても、かなり早い時期から自閉症児の言語発達を追っていくことで、より効果的な早期介入の指針が得られるでしょう。
posted by iRyota at 06:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Iryontaさん、
Autism2005での発表を翻訳してくださってどうzもありがとうございます。ところで、この言語と自閉症の記事の原本はどこにあるのでしょうか?Googleしたのですが、見つかりませんでした。とても興味深いと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by ルーン at 2005年11月07日 04:25
ルーンさん、これはウェールズのAWARESという団体が主催して行なわれたネット会議の分科会報告です。

http://asdnews.seesaa.net/article/8199560.html

会議自体は10/21で終わりましたが、発表された文章と掲示板は11/11 (グリニッジ時?) まで閲覧・書き込み可能です。ただし名前などの登録が必要です。(無料です。)

http://www.autism2005.org/

ベルケラール-オンネス教授の発表 "Captured by details: Sense-making, language and communication in autism" は Journal of Communication Disorders という専門誌に載った論文の再録です。

テイガー-フラスバーグ教授の発表は進行中の調査の中間報告です。
Posted by iRyota at 2005年11月07日 07:07
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。