ローソンさんは、4人のお子さんのうち一人がアスペルガーで、ご自身も自閉症スペクトラムです。ご自身の体験と勉強に基づいて、自閉症の最も大きな特徴を感覚刺激に置いています。自閉症の人は、五感を通して入ってくる信号を同時並行で処理することができないのです。コミュニケーションや社会性の不全はその結果に過ぎないとローソンさんは主張します。感覚を統合する能力も本当は高いけれど、それ以前に感覚刺激の許容量が限られていると言うのです。勿論、この点に配慮してもらえれば、沢山のことを学び、人間関係を築くこともでき、さまざまな問題行動も回避できると考えています。
アーノルドさんは写真家でアスペルガー症候群です。大学ではメディア論を専攻し、今回の発表では自閉症を取り巻く状況をアーノルドさんの視点から分析しています。アーノルドさんによると、レオ・カナーとハンス・アスペルガーの報告した症例の数は多くないですが北米と欧州という断絶があったにも関わらず共通点が多いです。これらの症例とは別に、医学者の考えにそって、率直に言えば恣意的に、現在の診断基準は作文されており、それぞれに矛盾があります。そして、自閉症スペクトラムの当事者、権威ある専門家、自閉症を治したい親たち三者の対立と断絶というのが自閉症を取り巻く世界の現状だと考えているようです。アーノルドさんは、子どもが自閉症で悲しいという立場で製作されたCANのセンチメンタルなヴィデオに対する回答として、怒りをもって反論するのではなく、自閉症者として生きてきたことを明るく、誇りをもって表現するヴィデオを製作しました。
"Road Not Taken" [選ばなかった道] というのは20世紀米国の詩人ロバート・フロストの作品に基づいています。
ドナ・ウィリアムズさんは自閉症者としての体験を綴った本で有名ですが、社会学の優等生としての学位、それに言語学の学位を有しており、IQ70未満の子どもたちを対象にした教員の資格もあります。英国政府の機関で相談や研修の仕事をしてきた長い経験もあります。自閉症に関する教科書も書き、世界中で講演をし、沢山の自閉症児・自閉症者を個人的にも知っています。まぎれもない実践的な専門家です。自閉症は先天的な器質に加えて様々な環境因子の結果として起きる多元的な症候群だと考えており、それをドナさんはフルーツサラダにたとえます。同じ診断名でも原因は全く違うかもしれないし、一人の自閉症に複数の原因が存在することも多いと考えています。一点に絞ることなく、家族全員で協力し、あらゆる角度から問題を解決していくことが望ましいそうです。