ベルモンテ博士は英国ケンブリッジにある自閉症研究センターの上級研究協力員です。博士の論文には開催期間を過ぎてからアクセスしてみたのですが、公開されているのは要旨と講師紹介だけで、論文全文の頁は "Coming soon" [近日公開] となっています。要旨によると、自閉症の人たちの脳は、脳内で同じ場所やすぐ近くでの刺激の伝達が円滑に行なわれているのに対して、脳内でも別の部位にある箇所への伝達がうまくいかないそうです。自閉症の子どもや大人の心理的な特徴は、そういう脳の特徴による影響を発達の時期に受けた結果であろうとベルモンテ博士は考えています。
カサノヴァ博士はジョージア医科大学で、脳の研究をしています。大脳新皮質には、沢山の神経細胞が森のように、あるいは鍾乳洞にある石筍の様に並んでいます。沢山あるこの小さな柱をミニコラムと呼びます。カサノヴァ博士たちが行なった調査では、自閉症の被験者9人と定型発達9人の脳を調べ、自閉症の方でミニコラムが小さいことを発見しました。オランダでも6人の被験者を盲験で調べ、同様にミニコラムが小さいことを確認されました。自閉症児の頭が大きめであることを考えると、自閉症者のミニコラムは1本1本が小さくても数が多いはずだとカサノヴァ博士は考えます。ミニコラムの数は、胎生期の早い時期に決まるそうです。自閉症と比較してダウン症の脳ではミニコラムが小さくないそうです。ミニコラムが小さくて本数が多いことによって生じる特徴は自閉症の特徴とも合致するとカサノヴァ博士は考えます。脳の限られた部分で行なわれる単純計算などに強く、広い範囲で行なわれる言語処理などは難しくなります。
自閉症のタイプや年齢による脳の特徴の違いについて、二つの研究は触れていません。どちらの先生も、全てのタイプの自閉症に共通する点に興味があるようです。いずれにしても、興味ぶかい研究ではあります。