80年代には2000人に一人だった自閉症が今では166人に一人の率で診断されていること、その理由として診断基準の変化や発見率の向上が指摘されていることも記事ではふまえ、それでもキレーションによる水銀排出を試みる医師や家族が増えていると主張しています。
二つの実験を監督するのはアリゾナ州立大学で化学を教えているジム・アダムズ教授 (Ph.D) です。医師として中心的な役割を担うサンフォード・ニューマーク博士は医学界で主流派の療法と非主流派の代替医学系療法を組み合わせて実施することを得意としています。どちらの実験も二重盲験で行なわれます。ヴィタミンとミネラルの実験では3歳から9歳の自閉症児78人を対象に、食事や栄養状態、自閉症状の程度を調べ、サプリメントの粉末が1日3回、4ヶ月間投与されます。過去に行なわれた小規模な実験で、自閉症の子どもたちと定型発達の子どもたちの血液を調べ、自閉症児の血液には必須栄養素が少なかったとアダムズ教授は言います。消化器に何らかの問題があって吸収できないのだろうと考えています。この実験に資金を提供したのは米国自閉症協会 (ASA) のフェニックス支部、州立大学、ARIです。
キレーションに対してニューマーク博士は否定的です。自閉症に対してキレーションが効果的だという証拠が皆無だからこそ検証が必要だと考えています。まず80人ほどの子どもたちにDMSAを投与し、尿から排出される有害金属が多かった子どもたちにはキレート剤の投与が続けられます。鉛中毒の治療と同じように11日サイクルの投与が3ヶ月行なわれるそうです。一部の子どもたちは遺伝的に有害金属を排出する能力が弱いのだろうとアダムズ教授は考えています。この実験に資金を提供したのはスコッツデールにあるウォレス基金という財団です。