有名な心理学者サイモン・バロンコーエン教授の行なった調査によると、胎児期に男性ホルモンの高い状態にあった子ほど幼児期に目線が合わず、コミュニケーション能力の発達も遅いそうです (The Testosterone Theory)。
バロンコーエン教授はこのデータをふまえて、自閉症の原因を極端な男性脳のためだという仮説を唱えていることは日本でも知られています。
ただし、自閉症と男性ホルモンの関係は、水銀中毒説を支持している人たちのあいだで何年も前から言われています。
多量の水銀で起きる腎障害などに性別の差はありませんが、少量の水銀で起きる中毒の症状は、動物実験でオスに多く、臨床的な研究で男性に多いことが、サリー・バーナードさんたちの論文の中でも指摘されていました。
ボイド・ヘイリー教授 (Ph.D) がIOMの2004年公聴会で見せたスライドでは、自閉症と水銀中毒の男女差に関するデータも示されています。
ヘイリー教授スライドで6枚目が、エイミー・ホームズによる乳児期の毛髪の調査結果です。グラフの左側が軽度 (Mild)、中央が中度 (Moderate)、右側が重度 (Severe) の遅れを伴う自閉症児の毛髪水銀で、重度の子ほど水銀値が低く、排出能力の弱さを示しているデータと考えられますが、男子 (緑) に比べて女子 (黒) は、水銀量が同程度でも症状が軽く出る傾向が示されています。
7枚目はネオマイシンとチメロサールと男性ホルモン (TESTOSTERONE) の相乗的な神経毒性を調べた結果です。グラフの右へ行くほど男性ホルモンが多くした結果で、生き残っているニューロンが少ないです。
17枚目は結論で、女性ホルモン (ESTROGEN) がチメロサールの毒性を弱めるとも述べています。
最後に全く個人的な感想ですが、自閉症でも文章を書けるぐらいに能力を伸ばすことのできた人には女性が多いです。最初からアスペルガーだった人だけでなく、幼児期には重度の遅れを伴っていたような人もいます。加齢とともに症状が軽くなったとすれば、これも女性ホルモンと関係があるのかもしれません。