この番組は双方を対等に発言させることを優先するため、カービーさんとファインバーグ博士が直接討論するという形式は採用せず、司会者のティム・ラサートさんがそれぞれに質問するという形式で行なわれました。
要約するとこんな感じです。
ラサート: なぜCDCとFDAは水銀の量を計算せずに小児ワクチンを倍に増やしたのか、その時期になぜ自閉症が何倍も増えたのかという問いから。
カービー: 答えは見つかっていないが早急に調査すべき。公的機関の提出した証拠のほとんどは総人口調査のデータだが、必要なのは水銀や自閉症児の臨床的研究。
ラサート: 自閉症は本当に激増しているか?
ファインバーグ: 自閉症の定義が広がったし、早期発見に力を入れるようにもなった。本当に増えているかどうか分からない。
ラサート: 自閉症とはどういうものか、手短かに説明を。
ファインバーグ: 深刻な発達の問題、特徴は社会的な接触を嫌うこと、特定の行動を繰り返すこと。典型的な例では集中力の欠如。基本は他者との関係を結べないこと。
ラサート: IOMの2001年答申では、否定も肯定もできないが水銀は除去が望ましいと言っており、2004年には無関係という結論を出したが、そのあいだの3年間でどういう変化が?
ファインバーグ: 2004年には総人口における発症率の調査結果が出ていた。米国、英国、デンマーク、スウェーデンでの大規模で系統的な調査で、いずれも関連性が発見されなかった。
ラサート: カービーさんの意見は?
カービー: IOMで重視された五つの総人口調査は、どれも重大な欠陥があるか、深刻な疑問が提示されている。総人口調査だけでは薬物被害の証拠としても反証としても不充分だと連邦裁判所でも言っている。
ラサート: 分かりやすく言うと?
カービー: 現実に存在する自閉症の子供たちを調べることが必要。IOM公聴会で、水銀説に否定的な報告は総人口調査、肯定的な報告は生物学的な研究が多かった。検討された資料には毒物学の研究が少ないし、委員に毒物学者がいない。
ラサート: IOMが重視した五つの総人口調査は致命的欠陥があり、同じ結果が再現されておらず、論文の著者たちはワクチン行政かワクチン製造会社とつながりがある一方、IOMが完全無視した、チメロサールと子供たちの症状を裏付ける生物学的データや臨床データは信頼できる研究者たちによって行なわれたと、親たちの団体は言っている。
ファインバーグ: IOMの調査委員会はさまざまな分野の専門家から成り立っており、あらゆる角度から検討した。重要なデータもそうでないデータもある。調査の過程と結果はネットでも公開している。五つの調査報告は、同様の方法が4回再現されたと言える。完璧とは言えないし、細かい点で違いもあるが、結果はどれも同様で、チメロサールと自閉症の関連性は無いと言える。
ラサート: ワクチンに入っているチメロサールを除去することにした理由は。
ファインバーグ: チメロサールが自閉症や神経の問題を引き起こすという証拠が無くても、水銀はやはり神経毒であり、ほかの方法でワクチンを守れるなら、念のために水銀を除去する方が望ましい。いくつかのインフルエンザ・ワクチンは例外だが、水銀の除去は2001年に完了し、古いワクチンは2003年で期限が切れた。だからもう心配はない。
ラサート: 期限が切れる前のワクチンでは、水銀いりのもあったと?
ファインバーグ: 2003年になる前は存在したが、自閉症を引き起こすほど危険だったという意味ではない。
ラサート: カービーさんの意見は?
カービー: IOMの最終答申からもう14ヶ月たっており、新しい発見もある。たとえば一部の子供たちは遺伝的に水銀を解毒する能力が弱い。90年代の水銀量は多く、環境基準の125倍という例もあった。自閉症児の一部で体内の水銀蓄積が多いことも分かっているし、サルの実験ではエチル水銀の方が速く無機水銀に変わることも分かった。乳児の脳に無機水銀が溜まると脳が炎症が起こすため、自閉症児の脳が急に大きくなる可能性もある。こういう新しい報告があるのだからIOMも再び調査委員会を発足させると良い。
ラサート: いかがでしょう?
ファインバーグ: そういう報告は偏っている。さまざまな臨床データで、エチル水銀はメチル水銀より毒性が低いことになっている。
ラサート: キレーションで症状が劇的に改善されているという親たちからの手紙が沢山きているが、これは何らかの関連性を示唆するものでは?
ファインバーグ: 自閉症の治療法として、過去には沢山の流行り廃りがあった。逸話はどんなに沢山あっても証拠ではない。偏らない方法で二つの集団を比較した臨床実験で効果が証明されなければ分からない。
ラサート: 2000年に行なわれた秘密の会議とCDCの陰謀説をカービーさんは本気で信じているのか?
カービー: 陰謀とか隠蔽工作といった表現は不適切なので、私は絶対に使わない。ただし、透明性が欠如していたとは言える。
ラサート: 博士の意見は?
ファインバーグ: 透明性の欠如が結論に影響はしていない。何が不透明なのか良く分からない。
ラサート: 親たちは情報公開法に基づいて、CDCから調査のもとデータを要求しているが、個人情報だと言ってCDCは応じない。データを開示する方が科学的なのでは?
ファインバーグ: CDCのデータをIOMでも検討したし、審査を通った研究者にはデータを提供するようCDCに薦めている。とにかくIOMの最終答申に目を通していただければ、完璧と言えないまでも、提出した証拠が全て有効であることは分かるはず。
ラサート: 自閉症を引き起こす要因が他にも存在する可能性はあるし、チメロサールは無関係と証明される可能性もあるとカービーさんは言っているが、いま何をすべきか?
カービー: 子供たちの助けになる様々な方法の臨床実験が必要。アリゾナ大学でキレーションの実験が進行中。親たちの話を馬鹿にしないで聴くことも必要。最新報告で、これまで本気にされていなかった後発退行型の自閉症が本当に存在することも確認された。(アリゾナ大学というのは間違いで、正しくはアリゾナ州立大学。) 透明性の欠如が予防接種への信頼性を弱めると政府の文書にも書いてある。
ラサート: タスク・オーダー74という内部メモにCDCとIOMの密約が書いてあると親たちの団体は言っている。開示されない理由は?
ファインバーグ: それが何の文書か知らないが、IOMでの調査に資金を提供するのがCDCであることは認める。ただし調査委員は無給。CDCからの資金は国民の税金。あくまで公的な資金を使って公的な調査をしている。
ラサート: おそくとも2003年にはワクチンからチメロサールが除去されたわけだから、あと数年で仮説の当否は分かるはず。
カービー: そのとおり。
ラサート: 発症率で分かると?
カービー: 生物学的研究は必要だが、総人口調査も重要。
ラサート: それも早急な対応が。
カービー: 内部文書というのは、CDCからIOMに圧力があったことを裏付ける文書だと思う。そういう文書も開示して透明性を確保すると良い。
ラサート: CDCから圧力があったのか?
ファインバーグ: 政府機関に影響されない立場で発言することこそがIOMや国立科学アカデミーの存在理由。
ラサート: チメロサールと自閉症は全く無関係だと断言できるか?
ファインバーグ: 断言できるのは、最良の証拠がどれも関連性の欠如を示す方向にあること。100パーセント確実という断言はありえない。現時点では、もっと将来性のある方面に貴重な資金を使う方が良い。
ラサート: 現在、インフルエンザのワクチン以外にチメロサールは入っていないと。
ファインバーグ: チメロサールの入っていないインフルエンザ・ワクチンもある。
ラサート: カービーさんは関連性がありうると信じている?
カービー: 勿論。この国の自閉症の一部はチメロサールによるものだったと、いずれ分かるかもしれない。
ラサート: 品位ある議論に感謝したい。
この対談全文は、下記のリンクで閲覧できます。前半は全く別の対談です。長い頁の真ん中あたり "Dr. Fineberg, Mr. Kirby, welcome both" というところからご覧下さい。
この対談のヴィデオは、FAIRで公開されています。クイックタイム (QT) とウィンドウズ・メディア・プレイヤー (WMP) で、それぞれ3部に分かれています。聴き取りのコツ: 今回の出演者たちは、チメロサールのことを「サイメロサル」という風に発音しています。
iRyotaの参考資料
IOMの2004年答申については下記の頁をご覧下さい。
対談の中でカービーさんが言っているサルの実験は、メチル水銀よりエチル水銀を注入したサルの方が血液中の水銀濃度が速く低下し、脳内の総水銀量も低いという部分だけがIOMでも報告され、エチル水銀は排出が速く、メチル水銀より危険が少ないという主張の根拠とされました。
この実験の結果が独立した論文として2005年、正式に発表されたときも、エチル水銀が安全であるかのように報道されましたが、その真相については下記の頁をご覧下さい。