内容はワクチンと自閉症の関係を否定し、予防接種の重要性を強調するものでしたが、新しい報告や情報は皆無でした。この日の速記録が公開されています。
会場へ入室できたのはCDCの担当者と、招待された報道関係者だけでした。記者会見の日時と場所をいちはやく見つけ出した親のかたも出席を希望しましたが、同じ建物の別室へ案内され、そこで会見のテレビ中継を見せられました。この会見はワシントンDC以外の場所にも中継されました。ミネソタ州の新聞記者で自閉症と水銀に関する記事を何度も発表しているクレイグ・ウェストーヴァーさんがその感想を、ご自身のブログで詳しく紹介しています。
クレイグさんはもともと自閉症水銀中毒説に対して懐疑的だったんですが、親たちからの手紙を読んだり実際に会ってみると、無学で狂信的な親が八つ当たりしているわけではないと分かり、ご自身で色々と調べてみたところ、それなりに説得力のある仮説だと考えるようになった人物です。それでも、この論争を採り上げる際には、ケネディさんのように政治的な立場はとらず、できるだけ客観的に書くように努めています。
この日の会見は翌日の集会で「秘密会見」として非難されましたが、招待された報道陣の中にはUPIのダン・オムステッドさんのように親たちの側に立っている人物も入っていました。質問の時間は限られていましたが、内容も公開されていました。ですから「秘密」という表現は不正確だとクレイグさんは言います。
それでも、翌日にワシントンDCで集会を予定している13の団体には連絡しなかったことや、全く目新しさの無い発表内容、質問に対する答えかたなどから判断して、CDCに説得力は無かったと言っています。
この日の発表者で印象的だったのは、微生物学者で娘さんが自閉症だというピーター・ホーティーズ博士だけでした。自閉症児を育てることの大変さも知っており、専門家として伝染病の恐ろしさも知っており、水俣病と自閉症の相違点を挙げて説明する様子は感動的だった様です。
質問としては、数日前に発表されたカリフォルニアのデータや、明日に控えた集会のこと、臨床的な研究への予算配分などが問われましたが、答えたくなさそうな調子や、はぐらかしているような印象が残る答えで、あまり説得力は感じられなかった様です。予防接種の重要性を繰り返し強調していましたが、親たちは予防接種自体に反対しているわけではありません。
http://craigwestover.blogspot.com/2005/07/cdc-media-briefing-on-vaccines-child.html
『ニューヨーク・タイムズ』『USAトゥデイ』NBCなどは、CDCよりの立場で報道しました。(『ニューヨーク・タイムズ』の記事は有料です。)
UPIのダン・オムステッドさんは、この日のやりとりを早速『自閉症の時代』で採り上げました。
米国にいて予防接種を受けなかった集団を対象にした調査を行なう予定があるかどうか、オムステッドさんは会場で質問しました。答えは、ほとんどの児童が予防接種を受けているので、ごく小さな集団しか調査できず、意味のある発見は期待できそうにないというものでした。それならアーミッシュはどうかと質問したら、アーミッシュは遺伝子が偏っているので、有意な差が出てもそこから結論を出せないという答えでした。
ただし、遺伝子が自閉症の原因なら、90年代に起きたような激増は起こらないはずだと、医学博士であるデイヴ・ウェルドン議員が言っています。ウェルドン議員もこの日の会見に来ていたのですが、終了後、政府役員よりも多くの質問を記者たちから受けていたそうです。
連載の続きでは、読者や関係者から寄せられた感想のいくつかが紹介されています:
アーミッシュに関する質問をしてから11秒の沈黙が続き、そのあとの回答も専門用語の羅列で、法律関係の仕事をしていた人から見ても、これほど分かりにくい回答は無かった。
アーミッシュの遺伝子が偏っていて参考にならないと言うなら、デンマークでの調査結果や水俣病の例を米国の子供たちに当てはめるのは無理がある。
予防接種を受けていない集団を調べるなら、秘密にしているCDCのデータベースで行なえばよい。