"Both Sides Now" [いまは両サイドを] はジョニ・ミッチェルさんによる往年のヒット曲である "Both Sides Now"、邦題「青春の光と影」にあやかって、今回の報道の光と影を紹介する連載への露払いとなるものです。
まずは『タイムズ』編集部からの主張を紹介しています。新聞記者の原則通り、『タイムズ』は水銀説をめぐる両サイドの意見に対して、充分に時間をかけて耳を傾けたという編集部の主張です。ただし、新聞記事の字数には限りがあるので、雑多な情報から適切なものだけを選択して記事を書き上げたのであり、細かい点で間違いがあっても方針として不適切な点は無いと言います。
"'The Times' vs Parents" [タイムズ対親たち] という記事では、『タイムズ』報道に見られるいくつかの不正確な点について、親たちの団体からの手紙をもとにオムステッドさんは述べています。
リン・レッドウッドさんはセーフマインズの代表の一人で『タイムズ』報道には "Lynn" という綴りで名前が出てきますが、正しい綴りはNが一つの "Lyn" であることを、手紙の署名でさりげなく述べています。これは小さな間違い、言わば重箱の隅ですが、新聞記者にとってこういう初歩的な誤記は具合が悪いものだとオムステッドさんは言います。名前の正確の綴りなどは本人に直接問い合わせれば確認できること、もっとも簡単な作業の一つであり、この種の間違いは、そういう基本的な調査を行なっていないような印象を読者に与えてしまうと言うのです。
水銀説を否定する根拠として重視された論文五つとして『タイムズ』報道に添えられた写真には、水銀と関係が無いMMRワクチンの調査報告が写されています。
ワクチンを製造している会社や予防接種を実施した医師からCDCに対して届けられた副作用報告が大半を占めているデータベースが『タイムズ』報道では親たちからの不平の報告とされています。
こうした間違いに対する訂正要求に対して『タイムズ』編集部が回答した文章の中では、セーフマインズ (SafeMinds) の綴りを間違えて、"SafeMind" とされています。
『タイムズ』報道の不正確な点は他にもありますが、これも実態をゆがめて専門家vs親という図式に押し込む結果になっているとオムステッドさんは言います。
以上は今年の7月に発表された記事ですが、オムステッドさんの連載はさらに続きます。