ロイ・E・ケリー博士という医師によって、ポーターズヴィルという町にあ Advanced Integrative Medicine Center [先進的集中医療センター] という代替医学系の治療を行なっている機関でキレーションを行なっており、そのオフィスで心臓が停止し、その場ですぐに心臓マッサージと人工呼吸が行なわれ、それを続けながら救急車で別の病院へ運ばれ、そこで死亡したそうです。
すでに死後解剖は行なわれ、警察も調査を始めていますが、キレーションが心臓停止の原因かどうか、結論が出るまでしばらくかかりそうです。
新聞の記事では、水銀などの毒物が自閉症と関係しており、これらを排出することで症状が軽減されるという考えが代替医学系の医師たちのあいだに存在すると述べるジョナサン・コリン博士と、自閉症に対して行なわれるキレーションはインチキであると主張するスティーヴン・バレット博士の談話も紹介されています。(バレット博士は開業医の免許を持っていない医学博士で、代替医学を批判する活動で知られています。)
コリン博士によると、EDTAは大人のキレーション治療に50年間つかわれてきたそうです。キレーションの効果と安全性については個人差が大きいとも述べています。
Michael Hasch. (2005.) "Autistic boy, 5, dies after disputed therapy." Pittsburgh Tribune-Review: August 25.
別の新聞に載った記事によると、このお子さんに対して行なわれていたキレーションは、EDTAの静脈注射によるものだそうです。
Karen Kane & Virginia Linn. (2005.) "Autistic boy dies during controversial treatment." Pittsburgh Post-Gazette: August 24.
以下は数日後の記事です。今回の事件をふまえて、それでもキレーションを続けている親たちの談話が紹介されています。いずれもEDTAの静脈注射とは別の方法です。
予防接種を開発してきた医師で、キレーションと水銀説に真っ向から反対しているポール・オフィット博士の怒りの声も紹介されています。ただし、オフィット博士の開発したロタウイルスのワクチンで過去に死亡例があったことには触れていません。
Virginia Linn. (2005.) "Parents of children with autism discuss results of chelation: Debate over controversial treatment heats up after death of 5-year-old boy." Pittsburgh Post-Gazette: August 29.
iRyotaの感想
EDTAは鉛やカルシウムに対して効果的なキレート剤ですが、水銀に対して効果的ではありません。高齢者の動脈硬化などを想定したキレーションに50年以上使われており、深刻な事故の報告はありませんでした。ただし、水銀中毒の人に対して使用したばあい、ある程度は水銀も動くので、不適切な方法で投与すれば副作用も大きくなる可能性があります。
EDTAとは別の話ですが、DMPSの48時間おき注射による方法でも心臓停止の例があると聞いています。たとえ医師の監督のもとで行なう方法でも、キレート剤の化学的な性質をふまえていない方法で水銀中毒の人に実施するのは危険です。
悲しい事件です。亡くなったお子さんのご冥福を祈ります。
関連記事を追加しました。
キレート剤による必須ミネラルの流出 (キレーションの危険性を知る上で重要)
デヴィッド・カービーさんの見解
ラシッド・ブッタール博士の見解
そのほか、自閉症と重金属に関する新しい記事:
真実はどうなのでしょうか?
下記の記事もご覧下さい。
http://asdnews.seesaa.net/article/7903144.html
キレート剤の大量投与で腎臓障害が起きるのは、毒物が腎臓に集中するためです。毒物中毒ではない人にこの主のキレート剤を投与しても腎臓障害は起こらないと思います。今回の事件の死因は心臓停止ですが、腎臓障害が心臓停止につながるとも考えにくいです。
もしもキレート剤が心臓に影響したとすればEDTAによるマグネシウム流出という可能性はあります。EDTAは水銀排出に対して効果的でなく、水銀中毒の人に投与すると副作用で苦しむことは、水銀中毒者の体験で知られています。