一卵性の双子は二人で全く同じ遺伝子を共有しており、二卵性の双子では遺伝子の一部を共有しています。ですから、遺伝子が原因で起きる現象は、二卵性より一卵性の双子のあいだで多く見られるはずです。
この調査では、自閉症スペクトラムの特徴のうちでも体表的と考えられる社会性の欠如と、同一性への執着が、沢山の双子のあいだでどう分布するかを検討しました。どちらも、程度の差こそあれ、定型発達の子どもたちにも珍しくない現象だからです。
対象になったのは、特に自閉症ではないらしい7歳の双子3000組です。
社会性の欠如に関しては、双子の両方に見られる例が、二卵性より一卵性の集団において多く見られました。つまり社会性の欠如は遺伝によって起きることが多いと考えられます。
同一性への執着も、双子の両方に見られる例が、二卵性より一卵性の集団において多く見られました。つまり同一性への執着も遺伝によって起きることが多いと考えられます。
自閉症のばあい、社会性の欠如と同一性への執着の両方が一人の子どもの特徴として強くあらわれます。もし二つの特徴が同じ遺伝子によって起きるとすれば、一卵性の双子の片方に社会性の欠如が見られ、もう片方に同一性への執着が見られるといった例も少なからず起きるはずです。
そういう観点でデータを検討した結果、社会性の欠如と同一性への執着の両方が一卵性の双子の両方に起きるような例は、あまり多くありませんでした。つまり、社会性の欠如を起こす遺伝子と、同一性への執着を引き起こす遺伝子は、それぞれ別である確率が高いことになります。
というわけで、自閉症を引き起こす特定の遺伝子が存在するとは考えにくいという結果になりました。もし自閉症と遺伝子に関係があるとすれば、いくつかの遺伝子が相互作用を起こした結果であろうとキングズ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは考えています。