2005年08月10日

NYタイムズは水銀説に反対: 無学な親たち?

水銀と自閉症の関連性について調べ、ルポルタージュ Evidence of Harm [実害の根拠] を書籍として発表したデヴィッド・カービーさんは、長年『ニューヨーク・タイムズ』に記事を提供してきた作家・新聞記者です。(ただし専属記者ではありません。) 4月17日には、同紙にこの本の書評も載りました(Polly Morrice, "What Caused the Autism Epidemic?")。

ジェネレーション・レスキューは自閉症児のキレーションを薦める団体として『ニューヨーク・タイムズ』に大がかりな広告を載せました。

この様な記事や広告によって『ニューヨーク・タイムズ』が水銀説を支持しているかのような印象を人々に与えることを経営陣や編集部は好ましく思っていなかったらしく、6月25日、水銀説やキレーションを真っ向から否定する二つの記事が、編集部名義で載りました。

"On Autism's Cause, It's Parents vs. Research" [自閉症の原因論は親たちVS研究結果] は、水銀が自閉症を引き起こすと主張する親たちを無学で頑固で感情的な集団として描いています。

CDC、FDA、IOM、WHO、そして米国小児医学会といった権威ある機関がそろって自閉症と水銀の関連性を否定しており、大がかりな調査結果をまとめた五つの報告で、いずれも関連性は発見されなかったこと、それでも納得しない親たちが数にものを言わせ、組織化して、小児科医療の世界に分裂を生んでいること、訴訟は4800件に上り、議員を説得し、チメロサール禁止法案を州議会や連邦議会に提出する運動も繰り広げられていること、関連性を否定した論文が不完全だと主張し、陰謀説まで唱えるロバート・ケネディ・ジュニアさんのような人物も出てきたこと、ワクチンの接種率が下がり、麻疹やポリオなど伝染病の危険にさらされる子どもが出てくること、ワクチン関係者に対する脅迫的な手紙や電話も増え、身の危険を感じる職員も出てきたこと、チメロサールのエチル水銀が魚のメチル水銀より毒性が弱いと考えられており、1本の小児用ワクチンに入っている量はツナサンドと同じくらいであること、2001年には、小児用ワクチンの水銀の量は母乳の水銀と同程度まで減らされたこと、除去したのは念のためで、従来通り水銀の入っている大人用のインフルエンザ・ワクチンでも安全性は変わらないこと、自閉症の原因として親たちはほかにも色々な説を主張していること、セーフマインズやバートン議員のこと、ガイアー博士の信頼性に疑いがもたれていることなどが述べられています。

上記の記事は有料なので、ここからリンクはしていません。

"Experts Reject Some Therapies" [専門家たちはいくつかの療法を拒否] という記事では、沢山の栄養剤やサウナ、解毒療法やキレーションがやり玉にあげられています。血液検査もしないでキレート剤を処方する医師、サウナと採血で気を失った自閉症児、何十ものサプリメントを飲まされて嘔吐した自閉症児の例が紹介され、その無意味さと危険さが批判されています。親としてこの種の療法を実践し、何の効果も見られなかったというジム・レイドラー博士の談話の入っています。

iRyotaの付記

自閉症児や水銀中毒の人には、体温の調節機能が作動せず、汗をかかない人もいます。そういう人にサウナは危険です。この記事に登場するアトランタのスティーヴン・エデルソン博士が実施しているキレート剤の注射も危険な方法で、効果もあまり期待できません。レイドラー博士が起草したDAN!の水銀排出プロトコルもキレート剤の薬物動態を踏まえない危険な方法で、効果が無かったのは当然です。水銀中毒ではない人にとってキレート剤の危険はほとんどありませんが、本当に水銀中毒のばあい、不適切な方法で解毒を試みるのは危険です。




posted by iRyota at 17:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 重金属 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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