2005年07月27日

RFK: あたらしい論客の陰謀説

ロバート・F・ケネディ・ジュニア、通称ボビー・ケネディさんは、故ロバート・ケネディ議員の子どもで、故ジョン・F・ケネディ大統領の甥です。弁護士として、環境問題に取り組んできました (www.blackwarriorriver.org/kennedy.htm
)。

20年以上のまえの話ですが麻薬所持で逮捕されたこともあるようです (en.wikipedia.org/wiki/Robert_F._Kennedy,_Jr.)。

自分たちの子どもの自閉症は水銀中毒だと主張する親たちのしつこいはたらきかけに根負けして、自分で調べてみたら意外な事実が出てきて驚き、懐疑派から転向しました。調べた結果を論文にまとめ、発表の場を探しましたが、どこの新聞社からも断わられ続けました。やっとのことで短縮版を掲載してくれたのは、若者文化の雑誌として長い歴史のある『ローリング・ストーン』誌と、ネット雑誌として有名なサロン.comでした。

内容は、絵に描いたような陰謀説で、紹介するのに気が引けるほどです。


雑誌に載せるまえの完全版が、ケネディさん自身の頁で公開されています。まず、90年代に始まった自閉症の増加に関するデータ、それから、チメロサールが使われるようになった1930年代に戻り、歴史の流れに沿って展開されます。

チメロサールは、重量の約半分が水銀からなる殺菌剤ですが、現在の医薬品認可制度が始まるまえ、1930年代に使われ始めました。髄膜炎の末期患者22人に、チメロサールの入った血清を投与し、顕著な副作用が無かったという報告が安全性の根拠として何十年間も示されつづけました。ただし、血清を投与されてから数週間でこの22人の全員が死亡したことは、報告書に載らなかったそうです。カナーによる最初の自閉症児の報告が出たのは1943年です。

その後も、この殺菌剤の危険性を製造会社が察知していたことを示す内部文書は、情報公開法の適用で親たちが入手した資料の中に沢山あるそうです。その後も危険性を示す数々の報告があり、軍用のワクチンに使用されるにあたって、これが毒物であることを認めましたが、注射に使うばあいは無毒と対外的に主張し続けました。1982年には、マーキュロクロムなど、処方箋なしで販売できる商品への使用禁止がFDAから出され、98年にやっと実施されました。それまで、殺菌のためという名目でへその緒にチメロサールをつけられた新生児11人が死亡するなどの被害もあったそうです。

91年には動物への注射が禁止されましたが、同じ年には、このチメロサールを使ったワクチンが何本も、乳児への接種を義務づけられることになりました。この年には、ワクチンの開発で有名なモーリス・ヒルマン博士による、水銀の量が安全基準を何十倍も上回っていることを警告する内部の覚え書きも残っています。

日本でもチメロサール禁止に向かったという記述がありますが、これはケネディさんの間違いだと思います。MMRと混同したのかもしれません。

それまで2500人に一人と推定されていた米国の自閉症児は90年代に急増し、今では166人一人、男子に限定すれば80人に一人とされています。

99年には乳児用ワクチンに使われている水銀の量を減らす動きが始まりましたが、2002年までは出荷が続きました。すでに出荷された水銀入りワクチンは回収されず、使われ続けました。今でもインフルエンザなどいくつかのワクチンには検出可能な量の水銀が含まれています。

99年にはCDCでもワクチン安全性データリンク [Vaccine Safety Datalink、通称VSD] を使って調査を行なったところ、使われている水銀の量と自閉症の発症率に強い相関が出たため、おどろいて色々と再分析を試みたと考えてもおかしくないやりとりが内部資料として残っています。

ここでケネディさんは、CDCがワクチン会社から研究資金を毎年もらったり、そういう会社が天下り先になっているなど、金銭的なつながりを強調しています。

2000年に、CDCはFDA、WHO、それに四つのワクチン会社の代表、自閉症や水銀の専門家をジョージア州のシンプソンウッドという会議場に集めて秘密の検討会を行ないました。自分たちの調査結果を見せて、問題点や今後の対策を話し合ったのです。これも詳しい議事録が残っています。このあたり、隠蔽工作の容疑をケネディさんや親たちはかけています。この時点では、水銀の摂取量がゼロだったグループを除外したり、自閉症の診断が正式に出される前の乳児も対象に含めるなど集計に工夫がこらされ、自閉症との相関は見えなくなりましたが、言葉の遅れや多動などに、弱いけれど統計学的に有意な相関が残りました。

このデータが訴訟に利用されたら困るという発言や、自分の孫に水銀入りの注射はしたくないと正直に主張した医学者の発言も記録されています。

ここからはCDCの資金で運営されているIOMのワクチン安全性検討委員会が主役になります。IOMは2001年の発表で中立的な態度を取り、2004年にはいくつかの総人口調査を根拠に、因果関係を否定することになるのですが、これも最初からそう予定されていたとケネディさんは言います。最初はオープンな態度を見せ、どんな調査結果が出ても最終的にはワクチンの安全性に関して一歩も譲らないつもりだったと考えてもおかしくない発言がIOMの議事録に残っていると言うのです。

余談ですが、ワクチンの水銀と自閉症の因果関係は、否定するにも肯定するにも証拠が不充分で今後の調査が必要という2001年の中立的な発表は、なぜか "No Link" という見出しでランセット誌に報道され、これで決着がついたかのような印象を医学界にふりまきました。

ケネディさんは、水銀説に否定的な政府機関の役員に対しても聴き取り取材に成功しており、2001年の時点で4500件もの訴訟をかかえていたという発言を引き出しています。

CDCで調査を行なった若手の疫学者はワクチン会社に雇われて故郷のベルギーに帰り、VSDにはさらに操作が加えられ、財政的に破綻した医療機関から買い取ったデータが加えられ、水銀との因果関係を否定も肯定もできない結果として、2001年のIOM公聴会で発表されました。

シンプソンウッド会議では、米国での総人口調査はもうやめようという提案が出され、ワクチンで使われる水銀の少ない英国や、水銀入りワクチンの使用をやめたスウェーデンやデンマークでの調査が計画され、順次実施され、発表されていきました。どの調査にも、ワクチン会社の研究員や、金銭的なつながりのある専門家が加わっており、最初からワクチンの無実を証明することが目的だったとケネディさんは言います。医学論文を発表する上での倫理規定では論文の内容に関して著者に金銭的なつながりがあるばあいはそれを明記することが義務づけられていますが、これらの論文ではその倫理も守られませんでした。水銀入りのワクチンを接種した健康な赤ちゃんの血中水銀を調べた論文も、倫理規定を守らずに発表されましたが、水銀が脳に入った可能性を否定できるようなデータではありませんでした。

CDCで調査を行ない、ベルギーへ帰った疫学者は隠蔽工作の容疑を否定しています。同時に、この調査結果が水銀と自閉症の関係を否定する立場でも肯定する立場でも決定的な答えとは言えず、さらなる調査が必要だとも、最後の公聴会が終わった2004年3月に、学会誌当ての手紙の中で主張しています。

水銀が強力な神経毒であり、神経の発達に遅れや混乱をもたらすという医学的な証拠は山ほどあります。これらの証拠を排除するため、IOMでは広い意味での神経学的な問題に触れず、自閉症との因果関係に絞って2004年の2月に再度の公聴会が行なわれました。勿論、自閉症も神経学的な症候群の一つであり、さまざまな神経の問題とのあいだに境界線を引くことは難しいです。

IOMの調査委員会による最終報告は2004年5月に発表されました。水銀とMMRワクチンに関して、自閉症との因果関係を否定する立場の方が好ましいという結論でした。これが拡大解釈され、一切の関係が否定されたかのように、水銀説を否定する立場の団体からは利用されることになります。今後はこの種の調査も行なわないように呼びかけたIOM発表に対し、米国自閉症協会 (ASA) などが指示しないという意見を表明したことは、すでにお伝えした通りです。

VSDは非公開の状況が続いています。ガイアー博士たちが利用申請の書類を山ほど提出し、何ヶ月も待たされてやっとアクセス許可が下り、実際に調べてみたところ、99年から2000年にかけて行なわれた調査のデータはすでに消去され、別の医療機関のデータが入っていたと言われています。この問題は2005年に入ってIOMでも再検討され、これからはVSDの管理も別の機関に委ねられることになりましたが、過去のデータの行方は謎のままです。

サルを使ったエチル水銀の実験では、メチル水銀より速く血中濃度が低下したことだけがIOMで報告され、排出が速くメチル水銀より安全であるかのように主張されましたが、これも2005年に発表された論文では、エチル水銀の方が速く脳内で無機水銀に変化し、より危険であることが判明しました。

チメロサールは微生物よりも哺乳類に対する毒性の方が強く、ワクチンに使う殺菌剤としてあまり効果的ではないというデータもケネディさんは紹介しています。WHOが未だに発展途上国でチメロサール入りのワクチンを使い続けている理由は、一本ずつ使い切りのワクチンにかかる莫大な費用ということになっていますが、実際の殺菌効果や安全性、ワクチンへの信頼を考慮するなら、米国以外の国から費用を出させてでも、チメロサールぬきのワクチンに切り替えるべきだとケネディさんは言います。

ケネディさんの子どもたちは、90年代にチメロサール入りのワクチンを何本も打たれた世代です。自閉症にはなりませんでしたが、親として学校関係者と話す機会が多く、LD (学習困難) やADHD (注意欠陥・多動症) の子が増えたという話を現場で聞かされることが多かったそうです。



『ローリングストーン』誌とサロン.comで発表された記事は、シンプソンウッド会議などを中心に全体を短くまとめたもので、資料の出所などは書いてありません。

乳幼児向けワクチンに入っていた水銀の量などに関しては間違いもあり、あとで末尾に訂正記事が加えられました。



ケネディさんの記事に対して米国では賛否両論が巻き起こり、まだ熱い議論が続いています。記事が多すぎて紹介し切れません。水銀論争は、まだまだ続くようです。
posted by iRyota at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 重金属 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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