この論文によると、デンマークでMMRワクチンの接種を行なう時期は、平均すると生後17ヶ月で、98.5パーセントの乳児は3歳になる前に接種を完了しています。正式に自閉症と診断される時期の平均は4歳3ヶ月で、軽度の自閉症スペクトラムのばあいは5歳3ヶ月です。MMRを接種した子で、後に自閉症と診断された子のうち、2歳までに診断が確定したのは48人、3から5歳までの診断が187人、6歳以降が34人です。軽度のばあいは2歳までが32人、3から5歳が202人、6歳以降が118人です。
これらの数値を見ると、すでに症状の出ている4歳児と軽度の症状が見られる5歳児の大半は、まだ正式に診断が降りていないと推測できます。(実際、早期介入の普及していない地域では、明らかに自閉症の症状が出ている子でも「しばらく様子を見ましょう」と言われて、正式な診断を延期することが多いと思います。) 調査対象の年齢層を引き上げればこの種の問題は回避できますが、この調査では、なぜか4歳児も対象に含め、しかも年ごとの延べ人数で計算しています。まだ診断の確定していない4・5歳児は「発症しなかった」集団に分類され、それが毎年かけ算されて、発症率の差に影響します。ですから、実際の数より少ない結果が出てもおかしくありません。
この論文で調査対象となった児童は
全部で延べ2129864人、そのうちで
典型的自閉症は延べ316人、
軽度の自閉症スペクトラムは延べ422人、
あわせて延べ738人です。
割り算すると、
典型的自閉症は6840人に一人、
軽度を含む自閉症スペクトラムは2886に一人、
存在することになります。
K. M. Madsen, A. Hviid, et al. (2002). "A Population-Based Study of Measles, Mumps, and Rubella Vaccination and Autism." NEJM 347.19: pp. 1477-1482.
この論文は英国の親たちに対して充分な説得力を持たなかったようで、その後もMMRワクチンの接種率は低下を続け、2004年にはウェイクフィールド医師の行動倫理を問題視する記事が発表されたり、2005年には横浜での調査結果をまとめた論文も発表されました。これから発表予定の論文もあるようです。