70年代から90年代にかけて、鉛中毒を併発している自閉症児の存在が報告されています。自閉症児の一部で物を口に入れる癖があるため、その結果として鉛の値が高くなったのか、それとも別の原因があるのか判断するのは難しいと考えられていました (Cohen and others, 1976, "Pica and elevated blood lead levels in autistic and atypical children," American Journal of the Diseases of Children, 130, 47-48; Accardo and others, 1988, "Autism and plumbism," Clinical Pediatrics, 27, 41-44; Barton and Volkmar, 1998, "How commonly are known medical conditions associated with autism?" Journal of Autism and Developmental Disorders, 28, 273-278)。
1例だけですが、"succimer" という名前のキレート剤を投与して鉛の血中濃度を下げるにつれて多動や繰り返し行動の減った自閉症児の症例報告があります (Eppright et al. 1996, "Attention deficit hyperactivity disorder, infantile autism and elevated blood-lead levels: a possible relationship," Molecular Medicine, 93, 136-138)。ただし、多くのばあい、鉛中毒が発見された時点で神経の損傷は不可逆的だと考えられています。
自閉性症候群の子どもたちは、鉛中毒になりやすいという心配な事実もあるそうです。自閉症スペクトラム (PDD) の子どもたち17人の集団を定型発達の子どもたちと比較した結果、鉛中毒が再発しやすいという報告があるのです (Shannon and Graf 1996, "Lead intoxication in children with pervasive developmental disorders," Journal of Toxicology and Clinical Toxicology, 34, 177-181)。
iRyotaの追加: succimerという薬は鉛のキレート剤として知られていますが、別名をDMSAといい、体組織の水銀をキレートして排出させる上でも効果的であることが確認されています。