ガステイン先生 (Ph.D) は臨床心理学者として行動療法を実践し、言語などの能力を伸ばすことができても、自閉性症候群の子どもたちがなかなか社交的にならないことを気にしてきました。ABAで社交の作法を教えれば覚える子でも、それで社交的になるかどうかは別問題だそうです。アスペルガーの子で、普通の子のふりをする演技が完璧にできる子もいて、まわりの人は彼のことを定型発達 (普通) だと考えていても、青年期になると孤独感に悩まされ、相談に来たりするそうです。(定型発達の人でも演技はすると僕は思いますが。)
「心の理論」もよく話題にあがりますが、これを理解させても、定着しないそうです。英国ケンブリッジで「心の理論」を研究しているサイモン・バロンコーエン先生 (Ph.D) たちも、IQの高い自閉性症候群の子どもたちを相手に実験を行ない、「心の理論」を理解させることには成功しましたが、追跡調査によると、その子たちの社交性に変化は見られなかったそうです。ほかの人が何を考えているかなど、理解できても興味がないそうです。
そこでガステイン先生は、乳幼児が社交性を獲得していく過程を再検討しました。大雑把にまとめるとこんな感じです。(正確な要約ではありません。)
1. 年長者から快感刺激をもらい、人が好きになる。
2. 最初は同じ刺激の繰り返しを好むが、時々は意外な展開も面白いと思うようになる。
3. 年長者に導かれ、体験する快感刺激の種類を増やす。
4. 人の感情を読めるようになる。
5. 自分が楽しいとき、一緒にいる人も楽しいと分かると、嬉しい。(これが大事)
6. 同じ体験を共有していても、人によって感じ方が違うばあいもあることを悟る。
7. 感じかたの違いによる意外性も面白いと思うようになる。
8. 本当の気持ちを隠して演技する人もいることを知る。(心の理論)
自閉性症候群の子どもたちには、大人が積極的に介入し、上記の過程を通じて導いていくことが必要なんだそうです。RDIでは、いないいないばあのような遊びを通じて、相手の顔を見させるところから始め、ひとつひとつ遊びながら教えていきます。実際の訓練は、一見すると遊戯療法のようですが、フロアタイムや従来の遊戯療法と違って、大人主導です。
この方法では、IQの低い子でも、その子の知的水準に応じて社交性を育てることができるそうです。逆にアスペルガーの子で年齢不相応に言語能力が高いと、かえって社交性を育てる妨げになりかねないとも言っています。(相手かまわず難しいことを喋って、子どもたちが逃げてしまったり。)
米国まで行って訓練を受けられれば理想ですが、本格的にRDIを採り入れることが出来なくても、参考になることは沢山ありそうです。おねだりをするときなどに相手の顔を見ることを重視し、社交性の伸びるような遊びかたを考えてみるところから始めると良いでしょう。
上記の文章は、2002年にある会議室で発表したiRyotaの記事をもとに、若干の修正を施したものです。
この本の文章は、自閉症について英語で書かれた本の中では、読みやすい方だと思います。
本の購入先
DRLから取り寄せた本をiRyotaは読みました。
ガステイン先生たちが経営しているコネクションズ・センターから直接とりよせることもできます。
この本を出版しているフューチャー・ホライズンズ社から直接とりよせることもできます。
参考資料
Steven E. Gutstein. (2000.) Autism Aspergers: Solving the Relationship Puzzle;
A New Developmental Program That Opens the Door to Lifelong Social &
Emotional Growth. Arlington, Texas: Future Horizons.