本の内容は、米国の子どもたちのあいだで増加が見られる自閉症・注意欠陥症・言葉の遅れなどさまざまな発達の混乱に、ワクチンの防腐剤が拍車をかけているかもしれないという可能性についてです。
1987年の時点で1万人に一人と報告されていた米国の自閉症ですが、90年代に急増し、今では166人に一人です。もともと短期間に何本ものワクチンを接種することになっていた米国の子どもたちですが、この時期、水銀を主成分とするチメロサールという保存剤が入った新しいワクチンが何種類か追加されました。同じ頃、健康な子どもたちが予防接種を受けたあと無口・不安に陥り、肉体的にも病める様相を呈してきたことに気づいた親たちもいました。そして1999年、FDAの発表で、乳児期の水銀摂取量が政府基準を超えていることが公にされましたが、保健関係の権威ある諸団体は、その発表が親たちに強い不安を与えていることについて正面から対応できませんでした。
予防接種の水銀を問題視した家族の集団とそれを援護する人たち、対立することになった連邦政府、保健関係の公的機関、大手製薬会社、この両者の視点を今回の著作は採り上げるそうです。
要点としては:
* 1930年代にFDAから認可され、追跡調査が行なわれなかったチメロサール
* 自閉症の報告件数と、チメロサールいりワクチンの増加が平行して起きているようにみえること
* 保健に関わる政府機関であるFDA、CDC、それに医療や製薬関係の会社代表による秘密の会議で、ワクチンの水銀と神経発達の混乱について検討されたこと
* 2002年のテロ対策法案にこっそり追加された条項で、チメロサールを使っている製薬会社が訴訟から免れるよう意図されたこと
* 一生にわたって特別な支援が必要な子どもたちの家族によって始められた訴訟
* チメロサール摂取と神経発達の混乱に関係がありそうなことを示唆する新たな生物学的研究
法廷や議会で繰り広げられたやりとりを、両者の視点から採り上げるそうです。
デヴィッド・カービーさんはこれまで7年間『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿しており、科学・健康などの記事を執筆してきました。ジャーナリストとしては15年をこえる経歴があります。ニューヨークのブルックリン在住です。
デヴィッドさんの講演で使われたパワーポイントのスライド
米国時間ではまだ3月のはずですが、親たちの噂ではすでにいくつかの書店には並んでおり、読み終えた人もいるようです。この本、iRyotaはまだ入手していません。今回発売されるのはハードカヴァーです。アマゾンなどで注文できます。
はやく入手したければ米国のAmazon.comの方が良いと思います。
注と索引を除いても418頁あり、細かい字がびっしり並んでいます。写真などはありません。
前書きを読んでいて分かったのは、"evidence" という単語が「根拠」というニュアンスで使われていることです。ワクチンに入っている水銀が自閉症の一原因という仮説に関して充分な証明 "proof" は無いけれど、証拠というか根拠は沢山あるという意味です。
リン・レッドウッドさんを中心にサリー・バーナードさんや、ワクチンから水銀を無くす運動をしている親たちの物語が主軸になっています。水銀説に反対している人たちの主張も可能な限り採り上げています。
一方、アンディ・カトラーさんのことは全く出てきません。
Andyの名前はありませんでしたが、スケジュールは4時間ごとってありましたよね。嬉しかったです。
http://bmj.bmjjournals.com/cgi/content/full/330/7500/1154