自閉症児を対象にした教育方法として応用されるばあいは、B・F・スキナーの動物実験による研究に基づくオペラント行動の原理、つまり快感刺激の報酬によって行動を増やすことが中心でした。スキナーは動物や人間の子どもを使った実験のあと、さらに複雑な人間の行動、特に言語行動の観察研究に何十年もの歳月を費やしました。その成果は Verbal Behavior [言語行動] という著書にまとめられましたが、行動分析学を全く理解していないチョムスキーの的はずれな書評によって、言語学界からは葬られてしまいました。このあたりの経緯は『行動分析学入門』という書籍で分かりやすく説明されています。
オペラント行動の理論に基づいて自閉症児に言葉を教えるにしても、言葉のように複雑な体系を順々に教えていくばあい、どういう言語観に基づくかによって、教える手順は大きく違ってきます。ABAで言葉を教えるなら、スキナーの言語行動理論に基づいて教えると良いだろうと考えたのは、ジャック・マイケル先生 (Ph.D) をはじめとするウェスタンミシガン大学の行動分析学者たちです。この人たちは20年以上に渡る試行錯誤によって、この理論に基づく教授法を具体化してきました。それが AVB (Applied Verbal Behavior、応用言語行動)とか、VBと呼ばれる方法です。具体的な方法を示したVHSヴィデオ Teaching Verbal Behavior や、くわしい教科書も発売されています。
米国では専門家の直接指導によってこの方法を始める家族も沢山いますが、日本でこの方法について勉強するには、英語の書籍を読むしかありません。標準的な教科書とされているのが Teaching Lanugage to Developmentally Disabled Children です。この本には、子どもの言語行動の発達を細かく把握するためのチェックリストがついているので、一人一人に合わせたプログラム (IEP) を組むための役に立ちます。
上級用のカリキュラムとして使われているのが The Assessment of Basic Language and Learning Skills 通称ABLLS [エイブルズ] です。この本はロヴァス系の行動分析学者たちにも使われているようです。
VBは21世紀に入ってから米国の親たちのあいだで評判になっており、二つの集団を比較して効果を確認した論文もあるようです。日本でも一部のお母さんたちが密かに勉強して実践していますが、日本の大学でABAを教えているような専門家でこの方法を話題にする先生が少ないのは不思議です。TEACCH派の先生方からも、もっと注目されて良いはずの方法です。
[以下は論文の要旨です。勿論、要旨を読んだだけで鵜呑みにしてはいけません。]
上記の教材は、開発元であるBehavior Analysits, Inc.から直接購入することもできますが、DRLの方が速く届くかも知れません。