2006年10月15日

イスラエル: 父親の年齢と自閉症

父親の年齢が高いと子どもが自閉症である確率も高いという調査報告がことしの9月に発表され、海外では沢山の新聞に載りました。

この調査を行なったのは米国ニューヨーク州マウント・サイナイ病院の研究者たちで、対象となったのは1980年代にイスラエルで生まれた子どもたち31万8506人です。父親の年齢と子どもたち全体の数、そして自閉症児の数は以下のとおりでした。

父親が15歳から20代の子ども6万654人のうち自閉症児は34人
父親が30代の子ども6万7211人のうち自閉症児は62人
父親が40代の子ども4106人のうち自閉症児は13人
父親が50代の子ども190人のうち自閉症児は1人

この結果をもとに計算すると、父親が40歳をこえる子が自閉症である確率は、父親が40歳以下である場合の5.75になるそうです。

"Older Dads More Likely to Have Children with Autism."


感想:

この報告の統計学的な信頼性について考えてみましょう。調査対象となった子どもの数が多ければ多いほど、偶然かたよった結果になった可能性は低くなり、結果の信頼性は高くなります。

今回の調査結果では、父親が30代の子どもたち全体の数は、父親が40代の子どもたちの16倍以上になっています。これは統計学的な信頼性の差も非常に大きいということになるはずです。こういう状況で、二つの集団を比較した結果についても、その信頼性は、かなり限定された範囲にとどまると思います。

又、自閉症児の数も、96年以降にいくつかの国で行なわれた調査では、80年代までに行なわれた調査よりも何倍も多いという結果が出ています。これは80年代以前の調査で見過ごされていた自閉症児が多かったためだろうと憶測されることもしばしばありますが、それを裏付けるデータは発表されていません。成人の自閉症者が実際にはどのくらいいるのか、乳児期の記録までさかのぼって調査をしてみない限り憶測の範囲をこえることはありません。いずれにしても、80年代のイスラエルで生まれた子どもたちのデータが、現在の自閉症児に当てはまるかどうかは、未知数の部分が大きいです。

そういう条件つきで、興味ぶかい結果ではあります。決定的な相関とは言えないにしても、父親の年齢と一部の自閉症に何らかの相関があるというぐらいのことは言えるでしょう。
posted by iRyota at 18:34| Comment(1) | TrackBack(0) | 総合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しかし米エール大学医学部小児研究センターのGeorge M. Anderson氏は、父親に軽度の自閉傾向があり、そのために結婚出産が遅かったなどの原因も考えられるという。また、米サンディエゴ小児病院自閉症研究所長のEric Couchesne氏は「研究結果が神経学的研究や、自閉症の早期診断・治療に対して大きな影響を与える可能性は低い。研究は、脳や遺伝子の詳細について言及しておらず、原因として疑われる環境的要因についても触れていない」と述べている。



なぜか反論は隠されてるっぽい模様。
女性の人権がらみのコンセンサス主義の臭いも
しますな。
別に悪いことじゃないけど。
Posted by   at 2007年07月25日 21:36
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