2005年03月22日

DMG: 大規模な二重盲験

DMG (dimethylglycine、ディメチルグリシン、ダイマサイルグリシン)は、もともとヴィタミンB15とかパンガミン酸という名前で販売されていた栄養剤です。自閉症児の一部で症状を軽減させる効果があると言われ、実際に飲ませている家族は70年代から米国に存在しているのですが、厳密な臨床実験に必要な資金が得られないため、ながいあいだ民間療法として使われてきました。90年代になるとリムランド先生の呼びかけでドナ・ウィリアムズさんや沢山の家族が服用を始め、非公式の報告が注目されると、小規模な少量投与の二重盲験が行なわれ、二つの集団に意味のある差がなかったとして簡単に否定されてしまいました。

台湾では、自閉症児106人を性別・体重・言語能力に応じて同程度のペアに分類し、それを無作為抽出し、一方にDMG、もう一方に偽薬を飲ませる二重盲験を行ないました。DMGの投与量は体重1キログラムあたり6.94から10.41ミリグラムです。4週間の投与を行なったあと、2週間の休養期間をはさんで、二つの集団を交代させ、最初に偽薬を投与した集団にDMG、最初にDMGだった集団に偽薬を投与して4週間の実験を行ないました。最初の4週間が終わった時点で22人 (21%) が脱落し、10週間後には61人 (58%) が脱落しました。これでは適切な比較ができないので、最初の4週間が終わった時点での検査結果だけを分析しました。78%で症状全般と発達に効果が見られました。約7%で不眠やイライラなどの副作用が見られましたが、そのうち78%は葉酸の補充で解消できました。ただし、自閉症児の症状や発達の度合いは個人差が大きく、推測に頼らざるを得ない面も大きいので、厳密な評価は困難です。それでもイライラ、倦怠感、同一性保持、多動、不適切な言語などの症状に対して、軽度から中度の改善が見られたと判断されました。ただし、今後の課題として長期にわたる効果の検証は必要です。

90年代末期に台湾で行なわれた実験で、2000年に台湾の医学雑誌に掲載されましたが、日本ではほとんど知られていない報告なので、あえて紹介しました。以下の頁で英文による要約を閲覧できます。

Shin-Siung Jung, Yueh-Ching Lee. (2000.) "A double blind study of dimethylglycine treatment in children with autism." Tzu Chi Medical Journal 12: pp. 111-121.



http://www.tzuchi.com.tw/tcmj/89-2/8902-6en.htm
posted by iRyota at 06:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 生化学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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