以下は2005年11月8日の英国『ガーディアン』紙に載った記事の要点です。"'Evidence-based' ignorance over MMR" [MMRをめぐって「証拠に基づく」医学を標榜する無知] という、強烈な題名のついた記事です。
MMRワクチンを接種した子どものごく一部で、消化器の問題、食物アレルギー、発達の遅れ、自閉などの症状が見られ、それを目撃してきた親たちの声を医師たちが聴こうとしなかった中で、例外的に一人の消化器外科医が子どもたちの腸を調べ、自閉性腸炎という新しい症候群を発見し、その報告が『ランセット』誌に載りました。そのときの記者会見で、安全のためにはこの混合ワクチンより単独ワクチンの方が良いという意味のことをウェイクフィールド医師は述べました。
その後、次から次へと発表される大規模な疫学調査の報告を示して、MMRワクチンは安全だと英国政府が主張しています。要するに、疫学的な総人口調査の結果に基づいて、臨床的な証拠を否定しようというわけです。
それに対して、一人一人の患者に起きている症状とその原因について、この種の大規模な調査は因果関係を否定する証拠にも肯定する証拠にもならないとフィリップスさんは言います。Journal of American Physicians and Surgeons という雑誌に載った論文によると、生物学的な証拠による裏付け無しに、疫学的なデータだけで因果関係は確立できないそうです。言い換えれば、疫学的な証拠だけでは無関係であることも証明できないということになるのでしょうか。コクランの専門家向け発表でも、疫学データだけでは不充分だと言っている点は同じだそうです。
フィリップスさんによると、MMRワクチンを受けた自閉症児の一部で脊髄液から麻疹のウイルスが発見されたという論文を掲載した上記の雑誌は、審査のある専門誌だそうです。(ただし、この雑誌の論文がパブメドに登録されていないことについては触れていません。)
ウェイクフィールド医師と同様の発見を報告する論文が掲載された専門誌の名前もフィリップスさんは挙げています (Journal of Paediatric Neurology, Neuropsychobiology, Journal of Paediatrics, Journal of Clinical Immunology, American Journal of Gastroenterology)。
ゴールドエイカー博士の言う右翼的な圧力団体というのが具体的にどの団体を指すのかは明確にされていませんが、追加の予防接種をしてから症状が悪化すればそれは因果関係を裏付ける証拠になると主張する団体の名前として、フィリップスさんは米国のIOMを挙げています。
これらの症候群とMMRワクチンの関係は、まだまだ証明されていないともフィリップスさんは言います。必要なのは、臨床的な調査と、その結果を吟味することだと言います。英国政府や権威あるお医者さんたちが、そういう調査に対して逃げの姿勢を続けていることが問題なのだそうです。