"MMR jab is safe, medical experts conclude" という見出しで、決定的な安全性の証明であるという報道姿勢がうかがえます。
印象的なのは、98年の研究でMMRワクチンが自閉症とクローン病に関連しているという主張がなされたと、今回の記事で報道していることです。ウェイクフィールド医師の論文がランセットに載り、その論文があとで信頼性を失ったのに親たちが政府や権威ある学会を信頼せず、接種率が落ちていると述べている点は、他紙の報道と似ています。
98年の証拠が信頼性に欠けると述べるコクラン委員会デミチェリ博士の言葉が今回の記事では引用されています。コクランの委員会がどういう調査を行なったのかは述べていません。
記事の下には読者の投稿も掲示されています。
一方、ウェイクフィールド医師と親たちを擁護する立場の記事を同デイリー・メイル紙に発表し続けてきたメラニー・フィリップスさんが、今回の記事への反論を発表し、これは10月31日の同紙に載りました。ただし、同紙のネット版でフィリップスさんの反論を読むには登録が必要です。この反論はフィリップスさんのホームページでも公開されており、そちらでは登録しなくても読めます。
デミチェリ博士が記者会見で話したことは正確に報道されていますが、フィリップスさんによると、コクラン共同計画が正式に発表した文書は内容が違うそうです。
又、MMRワクチンとクローン病に関連があるなどとウェイクフィールド医師は一度も言っていないそうです。98年に報告されたのは、自閉症に似た新種の症候群である自閉性腸炎だったはずなのに、コクランの発表ではそのことにも全く触れていないそうです。さらに、今回の正式文書ではウェイクフィールド医師たちの証拠が信頼できないとも書いていないそうです。真相は逆だと言うのです。
全く報道されていませんが、今回の報告書には、"The design and reporting of safety outcomes in MMR vaccine studies, both pre-and post-marketing, are largely inadequate" [発売前も発売後も、MMRワクチンの安全性に関する調査のしかたと報告のしかたは、おおむね不適切である]という文や、"We found only limited evidence of the safety of MMR compared to its single component vaccines…" [単独ワクチンに比べ、MMR混合ワクチンの安全性については限られた証拠しか見つからなかった] という文が入っているそうです。たしかに自閉症との関連を裏付ける証拠は全く見つかりませんでしたが、MMRワクチンが安全だとも書かれていないそうです。
このワクチンを接種したあとに自閉症状や消化器の不調が始まったと親たちが言ってもお医者さんたちは取り合ってくれなかったそうです。ですから副作用報告として記録にはなりません。そういう診療記録を総人口レベルで調べても、関連性が見つかるはずはないとフィリップスさんは言います。
実際にこういう反応を示す子はごく一部ですから、大規模な調査で見過ごされる可能性もあります。ただし、遺伝的な要因やほかの環境因子がからんでくることもフィリップスさんは否定しません。
ウェイクフィールド医師の発見と同様のデータは世界中で見つかっているし、MMRのブースター接種で症状が増大した子や、自閉症児の脊髄液からワクチン由来の麻疹ウイルスが検出されたという報告もあるそうです。必要なのは大規模な臨床的調査なのに、英国政府はその実施を拒否しているそうです。
その一方で親たちの訴訟に関して、資金援助が打ち切られ、臨床的な調査もできない状態だそうです。
ウェイクフィールド医師は訴訟関係の団体から研究資金をもらっていた疑いがあるとして、その行動倫理に関する審査が行なわれている最中です。もっとも、自分の行動倫理にかけられた嫌疑をウェイクフィールド医師は否定しています。
その一方で、コクラン発表の第2著者であるトム・ジェファソン博士はワクチンを製造している会社に法的な助言をしたことがあるとコクランの報告書にも書いてあります。コクランの調査に協力した研究者の一人は、ウェイクフィールド医師の論文に反論している有名な論文の共著者の一人でもあり、この論文をコクランの委員会でも採り上げています。MMRワクチンが安全だと主張する根拠として使われているいくつかの総人口調査論文の著者も、製薬会社や関連性が証明されたら責任を取らされる政府機関とつながりがあるそうです。重要な医学的問題を発見したウェイクフィールド医師の倫理を叩くなら、実際に金銭的なつながりのあるこうした医師たちの行動倫理を問題にすべきではとフィリップスさんは言います。
それでも、今回のコクラン発表では、かつてMMRワクチンに使われていたウラベ株による髄膜炎の可能性を認めているそうです。英国の政府機関はその危険性を知っていたのに、何年もその株の使用をやめさせなかったそうです。
フィリップスさんは予防接種自体に反対しているわけではなく、単独ワクチンの使用を認めれば問題を解決できると主張しています。
ショッキングな話ですが、はたしてどちらが本当でしょうか? 数で言えば、MMRワクチンが安全だという立場の報道は圧倒的に多いです。
勿論、フィリップスさんへの反論も発表されています。これも近いうちに紹介します。
コクランの正式発表へのリンクを再掲しておきます。