2005年04月30日

オーティズム・ワン: 家族による家族のための一大イヴェント

自閉症者本人、家族、教育者、研究者、政府役員、議員、ジャーナリストなど、100人以上の講演者を招き、家族による家族のための大がかりな催しが毎年行なわれています。それがオーティズム・ワンです。"One family [ひとつの家族], one vision [ひとつの展望], one future [ひとつの未来], Autism One" といううたい文句から判断すると、みんなで一緒に自閉症の人たちが人間らしく生きていける未来をめざそうということのようです。

この催しを始めたのは、やはりオーティズム・ワンという名前のNPO法人です。教育・宣伝活動・資金あつめを目的に、自閉症児の親たちによって設立されました。体質改善・教育・公的機関との交渉など、さまざまな角度から子どもたちの状況を改善し、最終的には自閉症からの回復を目指します。

「回復」[recovery] と言っても、個性としての自閉症を否定しているわけではありません。講演者として招待されているテンプル・グランディン教授やスティーヴン・ショアさんのような人たちのことを回復した自閉症者と呼んでいるのです。

最近は、ネット上のラジオ放送という、音声情報を流す企画も始めました。

ことしの催しは5月26日から29日までシカゴで行なわれます。26日はGFCFメニューによるコース料理の夕食会です。新しい親のかたには、経験豊富な親のかたが助言者としてついてくれるそうです。27日から29日までに沢山の講演と展示が予定されています。基調講演はデヴィッド・カービーさんで28日、予約なしでも聴講できます。

その他の講演者は数が多すぎて、紹介しきれません。


子育て中の家族でも出席できるように、託児もあります。事前に予約が必要です。

寄付金やヴォランティアも募集しています。
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2005年04月28日

自閉症児におすすめの絵カード教材

Stages Learning Materials [ステージズ教材社] の Language Builder: Picture Noun Cards、通称ランゲージ・ビルダーは、日本でも使える絵・写真カード教材です。350枚の美しいカードが頑丈な箱に入っています。カードの裏側には単語や分類のヒントが英語で印刷してあり、訓練記録を記入する欄もあります。DPEの写真と同じ大きさなので、あとで写真カードを追加することもできます。勿論、英語の教材としても使えます。

初期の課題として使えるカードは白地に物だけが写っており、同じカードが2枚ずつあってマッチングの練習もできます。色や抽象的な図形のカードも2枚ずつあります。次の段階で使えるカードは、混乱しない程度に背景が写っており、同じ名詞でも少しずつ違う写真が何種類かあります。たとえば猫や自動車など、違った感じの猫や自動車が数種類あります。

段階が上がってくれば、食べ物、乗り物、動物といった分類の勉強にも使えます。これはVBの訓練にも便利です。

唯一の難点は値段が高いことです。写っている物が米国のものばかりで色が派手だったりしますが、我が家では問題になりませんでした。食べ物のカードには東洋風の麺類 (おそらくうどん) や、ケチャップ味の米のごはんもあります。

購入のしかたとしては、ステージズ社に直接注文する方法があります。

僕たちはDRLから取り寄せました。

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2005年04月25日

エチル水銀とメチル水銀: サルの実験

チメロサール (エチル水銀を使った殺菌剤) を注射したサルとメチル水銀を注射 [食物チューブで摂取] したサルを使って血液中の水銀や脳内の水銀を調べたところ、血中濃度と脳内の総水銀量はエチル水銀の方が速く低下するけれど脳や腎臓内の無機水銀は増えていたという報告が発表されました。

この報告から、血中濃度と脳内の総水銀量に関してエチル水銀の方が速く低下したという部分だけを強調して報道した機関もあります。かなり詳しく報道していますが、エチル水銀はそれほど危険ではないという印象を与えます。

これに反発した親たちの団体が、意見を発表し、これも報道されています。メチル水銀もエチル水銀も有機水銀で、哺乳類の体内では次第に無機水銀へと変化します。実際に脳や内臓を破壊するのはこの無機水銀です。今回の実験で分かるのは、エチル水銀の方がメチル水銀より変化が速く、結果として無機水銀になって脳や腎臓に溜まりやすいこと、つまりエチル水銀の方が危険だと主張しています。

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2005年04月24日

自然療法の総合的な案内書

自閉症に限らず、統合失調症など、精神科で扱われるさまざまな症候群に該当する人の中には、補助食品や食事制限などで症状を緩和できる人がいます。1960年代からさまざまな研究も行なわれています。そういった成果を参照しやすい形で1冊にまとめたのが Eva Edelman [エーファ・エーデルマン] 先生の Natural Healing for Schizophrenia and Other Common Mental Disorders [統合失調症など精神科でしばしば扱う症候群のための自然治癒法] です。

通読する本と言うより参照する本です。いろいろな症状、栄養剤、アレルギーや解毒など、さまざまなテーマを要領よく整理して、限られたスペースにつめこんであります。統合失調症を対象にしたヴィタミン大量投与の開拓者として知られるエイブラム・ホッファー博士 (MD, Ph.D) が序文を寄せています。

アンディ・カトラーさん (Ph.D) も、毛髪検査の著書の末尾で、この本を推薦しています。

自閉症の原因は複数あると僕たちは考えています。そう考えている専門家は何人もいます。統合失調症と境界領域にある人もいます。最終的には、一人一人に合わせた健康管理や、医学的ケアが必要です。そのための糸口が、この本から見つかるかも知れません。

ネットで販売しているところはいくつかあります。アンディさんを通して買うこともできますが、僕はアマゾンから取り寄せました。
この本を出版しているボリジブックス社に直接注文することもできます。







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2005年04月23日

UCSD: 自閉症とミラー・ニューロン

10人の自閉症者の脳波を調べ、同じ年齢・性別で定型発達である人たちの脳波と比較したとき、自閉症者の方でミラー・ニューロンのはたらきが不充分であるという傾向が観察されました。

ミラー・ニューロンというのは、サルの脳に電極を差し込んで行なわれる実験の最中に偶然発見されたもので、サルが自分で動作をしているときに活動しているだけでなく、人の動作を観察しているときにも活動する部分です。模倣やコミュニケーションを行なう時に、このニューロンが何らかのはたらきを担っているのかもしれません。

実験が行なわれたのはカリフォルニア大学サンディエゴ校にある神経科学研究所です。(ただし、以前に紹介してクールシェンヌ教授の研究室とは別のグループのようです。) 博士課程に在学する大学院生リンゼイ・オーバーマンさんが実験の中心になりました。自閉症者の脳に電極をさしこむことはできないので、かわりにEEGという方法で脳波を調べました。対象になったのは、比較的IQの高い自閉症の子どもや大人、あわせて10人です。

何もしていないときに出ているミュー波が、自分で何かしているときには止まります。定型発達の人のばあい、他人の動作を観察しているときにもこのミュー波がとまります。これに対して、自閉症の10人は、自分の動作でミュー波がとまっても、他人の動作を観察しているときにとまりませんでした。

今回の発見が、将来の早期発見や教育的支援の役に立つ可能性はあります。

論文は専門誌への掲載が予定されています。米国ではいくつかの報道機関がこの報告を採り上げています。以下のリンクはUCSDの広報誌に載ったものです。


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2005年04月21日

米: 早期教育に関する政府諮問委員会の勧告 2001

90年代の終わりに、米国政府の資金で、自閉症児の早期教育について検討する諮問委員会が組織され、全米各地で行なわれた研究報告を比較し、その結果が2000年 [訂正: 2001年] に発表されました。委員長はミシガン大学のキャサリン・ロード教授 (Ph.D) です。以前はノース・キャロライナ大学で教授をしていたので、TEACCH関係者のあいだでは有名な人物ですね。

検討の対象となったのはABA、TEACCH、デンヴァー・モデル、フロアタイムで、数が多いのはABAですが、それぞれが基盤としている理論の違いよりも、いくつかの共通点の方にこの委員会では着目しました。成果の上がった方法の要点は以下の通りです。自閉症児の教育に関して、権威ある専門家集団のあいだで形成された合意と考えてさしつかえないでしょう。

1. 早期開始 (p. 151)
「自閉症スペクトラムに該当することが疑われたばあい、個人に合わせた細かい目標と体系的な実施計画に基づく教育を、可能な限り早期に開始すべきである」(p. 220).

2. 訓練時間に関して集中的 (p. 151)
「体系的な計画に基づき、明確な目標を定め、発達段階に適した教育活動を、最低でも週25時間、年間12ヶ月を通して行なうべきである」(p. 220).

3. 家族の役割を重視 (p. 152)

4. 自閉症に特化し、高度な訓練を受けたスタッフ (p. 154)

5. 子どもの進歩を、継続的かつ客観的に把握 (p. 156)

6. 計画的・体系的なカリキュラム (p. 158)

7. 物資・時間・人員を充分に (p. 158)
「それぞれの目標が効果的に達成されるよう、一人一人の子どもに対して毎日充分な注意が払われるべきである。充分な注意というのは、個別のセラピー、発達段階に適した少人数指導、1対1の直接指導を含む」(p. 220).

8. コミュニケーションの確立やその他の発達領域に焦点を絞る (p. 159).
コミュニケーション、課題への集中、社交的なふるまい、遊び、認知や学習技能、自助技能、行動問題、手足の運動能力 (pp. 160-163)

「非常に幼い子のばあい、ほとんどの子は訓練によって音声言語を発するようになる可能性があると仮定して教育計画を作成すべきである」(p. 221).

入念に計画され、学術的な研究に基づく教育手順には、覚えた技能を一般化・定着させ、維持するための計画が含まれる (p. 163).

9. 個別介入計画は、子どもの様々な能力とニーズに応じて幅広く補正していく必要がある (p. 164).

10. 幼児クラスから義務教育へとの移行が計画的に支援される (p. 163).

参考資料

Lord, C., Bristol-Power, M., Cafiero, J. M., Filipek, P. A., Leslie, A. M., McGee,
 G. G., Odom, S. L., Rogers, S. J., Volkmar, F. R., & Wetherby, A. M., as
 Committee on Educational Interventions for Children with Autism, Division
 of Behavioral and Social Sciences and Education, National Research
 Council. (2001.) Educating children with autism. Washington,
 DC: National Academy P.
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2005年04月20日

水銀とキレーションのネット会議室

Autism-Mercury (オーティズム・マーキュリー) は自閉症と水銀、対策としてのキレーションに関する情報交換を行なう公開メーリング・リスト (ネット会議室) として常時3000人以上の会員が活発な議論を繰り広げてきました。今は4968人です。

2000年の1月にこのグループを始めたのは、看護師で母親でもあるリン・レッドウッドさんで、リンさんと一緒に水銀中毒説の論文を書いたサリー・バーナードさんも常連です。サリーさんの依頼を受けて加わった民間学者のアンディ・カトラーさん (Ph.D) がキレーションの方法や健康管理について具体的な発言をするようになってから、ネット上で何度も意見の衝突が起こり、その一方でキレーションの成果を発表する親たちも沢山でてきました。

ネット上で具体的な質問に答えているのはアンディ派の人たちがほとんどですが、リンさんやアスペルガーのテリーサ・ビンストックさんのように、DAN!派の人たちもいます。

ヴォランティアの人たちによって集められた資料室も充実しています。JiJoで公開している翻訳資料も、もともとここにあったものです。運営母体のヤフー!が方針を変更し、内部の人にしか閲覧できないようになったので、多くの資料はモリア・メリウェザーさんの頁に移動しました。ただし、新たに追加された資料は入会しないと閲覧できません。


過去ログの検索には以下の頁が便利です。


このグループでは政治的な情報交換も活発に行なわれています。自閉症ではない大人の水銀中毒者も参加しています。中には、政治的な議論に興味を示さず、自閉症や発達に遅れのある子どもたちのキレーションに集中したいという理由で別のネット会議室を始めた人たちもいます。




1日あたりの投稿数が非常に多いので、入会せずに公開の過去ログだけを閲覧する人も多いです。こちらも2000人以上の会員がいます。
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2005年04月17日

FEATの技で早期介入

FEAT (Families for Early Autism Treatment) [フィート: 自閉症の早期介入を応援する家族の会] という団体がカリフォルニア州サクラメントで1993年に設立され、地域とネットで盛んに活動を始めました。今はFEATと名乗る団体がカリフォルニアで5カ所、テネシー州で2カ所、テキサス州で2カ所、それ以外に12の州で活動しています。カナダでも三つの州にあります。


93年は、ロヴァス式早期集中行動介入の追跡調査の結果が論文として発表され、キャサリン・モーリスの『わが子よ、声を聞かせて』が出版された年です。この時期に、幼いお子さんが自閉症だと診断された親たちは、この方法に興味を持ち、自分たちの子どもにも受けさせることはできないかと奔走しましたが、当時の自閉症協会など、多くの自閉症関係者は、この方法に対して後ろ向きだったようです。それで若い親の人たちは自分たちで情報を交換し、資金を集め、セラピスト候補者をUCLAに派遣して勉強させたり、自治体への請願などの運動を始めるためFEATを結成しました。

そのころ新たに自閉症と診断される乳幼児の数は多く、インターネットの民間利用も始まっていたので、ネットを使える親の人たちを中心に、会員も増えたようです。レニー・シェイファーさんの担当するEメールによるニューズレターは会員外でも定期購読者が増え、後に独立してSARとなりました。

北米各地に設立されたFEATはそれぞれで連絡を取りながら独自に活動しており、本部と支部という関係ではないようです。名前も "Early" のかわりに "Effective" [効果的] という単語を使い、自閉症への効果的な介入を応援する家族の会としている地域も沢山あります。

具体的な活動としては、資料の貸し出し、学習会、寄付金集めの夕食会、地域の学校に対する請願などです。学校で自閉症児を担当する先生の中にはABAに対して否定的なかたもいるので、そういう先生に対してしつこく請願を繰り返すようなこともしています。

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2005年04月16日

ウェイクフィールド医師の反論: MMRワクチンと横浜の自閉症

乳児のへのMMRワクチン接種を中断しても横浜で自閉症が増え続けたという論文に対して、ロンドンのアンドリュー・J・ウェイクフィールド医師が反論しています。混合ワクチンをやめて単独ワクチンにしても長い日数をおかずに連続して接種すれば副作用の危険はあるし、退行型の自閉症児を数える基準にも欠陥があると言うのです。


MMRワクチンの接種が始まった時期の増加、髄膜炎や死亡事故の報告が出て、接種率が低下した時期の減少、混合ワクチンが中断され、ワクチンに対する信頼が回復し、三種類の単独ワクチンが連続して接種される例が増えた時期の増加、横浜市の区画変更による減少など、年ごとの推移をグラフで示してあります。

MMRワクチンの接種を続けている英国や米国での自閉症児の増加とかなり違うパターンであることが分かります。

MMRを中断しても、三種類の単独ワクチンを1歳の時期に連続して接種することを日本では奨励してきました。ウイルスの相互作用による副作用の危険性を回避したかったら充分に日数を空けて接種すべきなのですが、そういう風には実施されませんでした。

横浜でのMMRワクチン接種は生後12ヶ月で、定期検診は生後18ヶ月ですが、今回の調査では、18ヶ月を過ぎてから症状が出てきた子どもたちを退行型として分類しています。こういう分類のしかたでは、MMRとの因果関係を把握する手がかりとして不正確だとウェイクフィールド医師は言います。

もともとウェイクフィールド医師は、三種類の単独ワクチンを、それぞれ1年以上の間隔をあけて接種するのが安全な方法だと主張してきました。横浜での調査報告を見ても、その点に矛盾はないそうです。

この記事を掲載したレッドフラッグズというのは、TVジャーナリストとして医療に関する報道を行なってきた故ニコラス・レガッシュ氏の始めたウェブ新聞で、これまでもワクチンと自閉症に関して過激な記事を発表してきました。医療や科学の諸問題に対して警告の赤旗を掲げるために運営されているそうです。








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2005年04月13日

自閉症トゥデイ: カナダ発のウェブ新聞

AutismToday [オーティズム・トゥデイ] は、カナダのアルバータ州エドモントンに本拠地を置き、ネット上でさまざまな情報を紹介しています。


面白いのは、自閉症関係者のあいだで有名な40組以上の人たちを顧問 (助言者) として迎え、質問コーナーを設けていることです。心理学者のトニー・アトウッド先生やサイモン・バロンコーエン先生 (Ph.D)、PECSのアンディ・ボンディ先生 (Ph.D) のような研究者や臨床家、テンプル・グランディン教授 (Ph.D) やスティーブン・ショアさん、ドナ・ウィリアムズさんのように本人が自閉症という人たちもいます。


商品の販売もしているので、広告料が資金になっているのかもしれません。

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2005年04月11日

豪州: セクレチン鼻スプレー

セクレチンはもともと下痢の治療に使われてきたホルモンです。セクレチン注射の直後に発語が始まったなど自閉症状緩和の例が報告され、90年代にブームがありました。その後いくつか大規模な二重盲験が行なわれ、下痢など消化器症状を伴う自閉症児を対象にした実験では効果が確認されました。そういう条件をつけずに集めた自閉症児が対象の実験では、偽薬を使った集団と比較して有意の差が見られませんでした。

差が見られなかったという結果だけが何度も報道され、セクレチンの効果は幻想だったと思っているかたが今は多いようです。日本で長年つかわれてきた合成セクレチンも、米国で親の方が経営している会社が商品化してきたブタのセクレチンも製造中止になったようです。

これまで日本や米国でセクレチンを続けてきた家族はそれで困っていたのですが、オーストラリアに住んでいる親のかたが、鼻からスプレーするセクレチンを紹介してくれました。Secretin Nasal Spray [セクレチン鼻スプレー] 略して Secrenase [セクレネーズ] という商品名です。



注射のばあいは月1回でしたが、鼻スプレーは1日1回が標準のようです。処方箋もいりません。まだ長い歴史はなく、効果に関して確証は得られていないかもしれませんが、消化器症状を伴う自閉症のお子さんでこれを試しているかたも出てきました。若干多動になる例もあるようです。伝統的なセクレチンの使用法と同じように、下痢にも効果があるかもしれません。

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2005年04月10日

UCSD: 自閉症者の脳の研究

カリフォルニア大学サンディエゴ校 (University of California, San Diego)、通称UCSDの神経学科のエリック・クールシェンヌ (Eric Courchesne) 教授 (Ph.D) は、長年、さまざまな方法を駆使して、自閉症の子どもや大人の脳を研究し、先駆的な発見を続けてきました。

自閉症が心理的な原因によるものではなく、生物学的な原因による症候群で、脳に特徴があることを実際に発見し、世間に示したのはクールシェンヌ教授の研究室であると言ってさしつかえないでしょう。自閉症児が千人に一人とされていた時代から研究を続けているので、大学の教授紹介頁でまだ千人に一人とおっしゃっているのは更新忘れでしょうか? (大きな大学の公式頁には、こういうこともあります。)

これまで学会や専門誌に成果を報告し続けてきたクールシェンヌ教授ですが、最近は Center for Autism Research [自閉症研究センター] として独自のホーム頁から情報発信も始めています。画像も交え、分かりやすい英文で説明がされており、自閉症と脳の関係に興味がある人にとっては参考になる点が多いです。

頭囲が非常に大きめであることを発見したのは、最近の研究で特に注目されている点です。巻き尺という最もローテクな方法で沢山の子どもたちの頭囲を測り、生後6から14ヶ月の期間に頭が急激に大きくなる傾向を確認しました。これは自閉症の子どもたちと定型発達の子どもたちの集団を比較したときに見られる傾向なので、個人的な例外もあります。頭が小さい自閉症児もいれば、頭が大きい定型発達の子もいます。自閉症児の中では重度の子の方が頭は大きめの傾向にあります。

MRI (Magnetic Resonance Imaging)、つまり磁気反響画像というハイテクな方法で頭の内部も調べ、大脳が大きくなっていることや小脳が小さくなっていることも確認されています。大脳でも特に大きくなるのは前頭葉、リンク先の画像では薄紫の部分です。





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2005年04月09日

RDIの基本図書

RDIは、理論を説明した本と課題集が出ており、理論の方の本から読んでみました。(理論の本でも実例は豊富に載っています。) Autism Asperger: Solving the Relationship Puzzle [自閉症とアスペルガー ―人間関係のパズルを解く―] という題名です。参考になりそうな部分をちょっと書きます。

ガステイン先生 (Ph.D) は臨床心理学者として行動療法を実践し、言語などの能力を伸ばすことができても、自閉性症候群の子どもたちがなかなか社交的にならないことを気にしてきました。ABAで社交の作法を教えれば覚える子でも、それで社交的になるかどうかは別問題だそうです。アスペルガーの子で、普通の子のふりをする演技が完璧にできる子もいて、まわりの人は彼のことを定型発達 (普通) だと考えていても、青年期になると孤独感に悩まされ、相談に来たりするそうです。(定型発達の人でも演技はすると僕は思いますが。)

「心の理論」もよく話題にあがりますが、これを理解させても、定着しないそうです。英国ケンブリッジで「心の理論」を研究しているサイモン・バロンコーエン先生 (Ph.D) たちも、IQの高い自閉性症候群の子どもたちを相手に実験を行ない、「心の理論」を理解させることには成功しましたが、追跡調査によると、その子たちの社交性に変化は見られなかったそうです。ほかの人が何を考えているかなど、理解できても興味がないそうです。

そこでガステイン先生は、乳幼児が社交性を獲得していく過程を再検討しました。大雑把にまとめるとこんな感じです。(正確な要約ではありません。)

1. 年長者から快感刺激をもらい、人が好きになる。
2. 最初は同じ刺激の繰り返しを好むが、時々は意外な展開も面白いと思うようになる。
3. 年長者に導かれ、体験する快感刺激の種類を増やす。
4. 人の感情を読めるようになる。
5. 自分が楽しいとき、一緒にいる人も楽しいと分かると、嬉しい。(これが大事)
6. 同じ体験を共有していても、人によって感じ方が違うばあいもあることを悟る。
7. 感じかたの違いによる意外性も面白いと思うようになる。
8. 本当の気持ちを隠して演技する人もいることを知る。(心の理論)

自閉性症候群の子どもたちには、大人が積極的に介入し、上記の過程を通じて導いていくことが必要なんだそうです。RDIでは、いないいないばあのような遊びを通じて、相手の顔を見させるところから始め、ひとつひとつ遊びながら教えていきます。実際の訓練は、一見すると遊戯療法のようですが、フロアタイムや従来の遊戯療法と違って、大人主導です。

この方法では、IQの低い子でも、その子の知的水準に応じて社交性を育てることができるそうです。逆にアスペルガーの子で年齢不相応に言語能力が高いと、かえって社交性を育てる妨げになりかねないとも言っています。(相手かまわず難しいことを喋って、子どもたちが逃げてしまったり。)

米国まで行って訓練を受けられれば理想ですが、本格的にRDIを採り入れることが出来なくても、参考になることは沢山ありそうです。おねだりをするときなどに相手の顔を見ることを重視し、社交性の伸びるような遊びかたを考えてみるところから始めると良いでしょう。

上記の文章は、2002年にある会議室で発表したiRyotaの記事をもとに、若干の修正を施したものです。

この本の文章は、自閉症について英語で書かれた本の中では、読みやすい方だと思います。

本の購入先


DRLから取り寄せた本をiRyotaは読みました。


ガステイン先生たちが経営しているコネクションズ・センターから直接とりよせることもできます。


この本を出版しているフューチャー・ホライズンズ社から直接とりよせることもできます。

参考資料

Steven E. Gutstein. (2000.) Autism Aspergers: Solving the Relationship Puzzle;
  A New Developmental Program That Opens the Door to Lifelong Social &
  Emotional Growth
. Arlington, Texas: Future Horizons.
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2005年04月08日

10年目のDAN!は来週ボストンで

10年前、自閉症の研究のうちで、直接の治療や症状緩和に繋がりそうなことを調べたり実践している専門家をリムランド先生(Ph.D)が選りすぐってダラスのホテルに集め、討論させたのが第1回のDAN! (Defeat Autism Now!) でした。その後は毎年のように大規模な研究集会を開催し、今度は4月14日から17日までボストンで行なわれる予定です。


不思議なのは、講演者の名前や講演の題目がまだ発表されていないことです


デヴィッド・カービーさんが15日の基調講演をすることはカービーさんの頁で分かります。題目は "Why Thimerosal Is Not Front Page News in America" [米国の新聞でチメロサールが第1面に載らないわけ] です。


追記: ARIの頁からプログラムへのリンクがありました。教えて下さったさゆみさんに感謝します。

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2005年04月07日

私は誰?

この海外自閉症情報も含めて、JiJo - 自閉症情報はiRyota個人によって運営されています。iRyotaは医療の専門家でも心理学の専門家でもありません。自閉症に関わる専門家としての肩書きはありません。親として子どものためになりそうな情報を集め、それを共有したいという目的でJiJoを運営しております。

個人的にさまざまな情報を提供してくれる専門家の友人は日本と米国に何人かおりますが、JiJoに掲載される情報に関してその人たちの責任は一切ありません。善意の協力に対して、本来は名前を挙げて感謝すべきですが、賛否両論の起きている話題も扱っている関係上、誤解の増幅によってその人たちに被害が及ぶことを避けるため、匿名とさせていただきます。ここに掲載される情報は医師や心理士による診断ではないし、正式な診断の代わりになるものでもありません。単に情報を提供しているだけです。

それでも、もとになる情報源や根拠はできるかぎり示します。掲載漏れがあるばあい、個人的なお問い合わせにも応じます。JiJoに掲載される情報でも、権威ある学会誌に掲載されたデータや情報でも、その真偽や当否については、ご覧になるみなさんがそれぞれの手段で可能な限りの情報を集め、議論し、考え、それぞれの責任で結論を出すべきだと考えております。

JiJoは基本的に非営利で運営されています。取り扱う内容に限界があることもご了解ください。

紹介する商品や企業に関して白状します。GPL (グレートプレインズ研究所) からは一度だけ昼食をご馳走になり、パネルディスカッションに参加するかわりとして、家族二人での講演会参加費を一人分にしていただいたことがあります。そのほかには、親のかたたちが運営している組織から講演料をいただいたことがあります。自分で行なった講演の記録に関して著作権は保有していますが、それが販売されたばあいでも金銭的な収益は一切いただいていません。iRyotaが自閉症について勉強するにあたり、大学の図書館にある専門誌や専門書を閲覧したことはあります。いかなる企業・商品に関しても、利用者・消費者の立場で発言しています。

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お母さんは法学博士でアスペルガー

ダナさんは米国のネット会議室で沢山の親たちの質問に答えている女性です。お子さんが4人いて、そのうち二人が自閉症スペクトラムに該当します。それで色々と調べていくうちに、ダナさん自身もアスペルガーであると分かりました。

VBによる言葉の指導、さまざまな栄養剤・消化酵素やダイエット、ALAを使ったキレーションなど、体験と博学に基づく頁は読み応えがあります。本も出版されています。



追記: ダナさんは法学博士で、弁護士として働いており、結婚してお連れ合いのかたもいます。自閉症に伴う困難を軽減するさまざまな方法について、当事者の視点から整理して、紹介しているところがこの頁の特徴です。アルファリポ酸による水銀排出はなんと8時間おきの投与で行なったそうです。2・3時間おきの方が副作用は少ないというアンディ・カトラーさん(Ph.D)の主張に対して反論しているわけではありません。4人の子の母親として小刻みな投与は不可能だったし、たまたまダナさんの子どもたちは体力があってそういう投与間隔でも大丈夫だったのだろうという立場です。

ダナさんの頁から色々な情報を得たいかたは、サイトマップから始めると良いです。


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2005年04月06日

論文: 水銀説を裏付ける一貫した疫学的証拠

マーク・ガイアー博士 (MD) とデヴィッド・ガイアーさんはワクチン被害報告のデータベースを使った調査で、水銀と自閉症に相関があったという学術論文を過去にいくつか発表しています。ただし、実際に被害が起きた例のごく一部しか報告されていないデータベースであることが報告の限界でした。今回はさらに詳しい調査のためにCDCが築いたデータベースの使用を許可され、それを使った調査で、さまざまな神経発達の不全に相関が見られたという結果を加えたものです。

Vaccine Adverse Event Reporting System [ワクチン被害報告システム]、通称VAERSは一般に公開されているデータベースで、これまでも予防接種の安全性を検証するために使われてきましたが、報告された例しか記録されていません。しかも、実際に副作用が見られても報告されるのは5パーセント程度と推測されており、このデータベースを使った調査を決定的な証拠と見ることには困難がありました。それでも、水銀の入っているDPT三種混合ワクチンと、水銀の入っていないDPT三種混合ワクチンを同時期に接種した集団を比較して、自閉症の報告率に有意な差がありました。

もっと詳しいデータベースは、連邦政府の機関である Center for Disease Control and Prevention [疾病予防管理局]、通称CDCが築いた Vaccine Safety Datalink [ワクチン安全性データリンク]、通称VSDです。このデータベースはいくつかの大規模な医療機関のデータが丸ごと入っており、CDCの内部でのみ利用されて来ました。ガイアー博士たちはしつこく利用申請を行ない、下院議員のデイヴ・ウェルドン医学博士の協力も得てやっと利用を許可されたのですが、その結果を発表することがなかなか認められませんでした。

今回ようやく発表できたのは、乳児期のワクチンによる水銀の摂取量と、ADDや発語の遅れを含む、さまざまな神経発達不全の症状全般に相関が見られるというものです。


ガイアー父子は、ワクチンに関する訴訟において相談相手になったり、証言台に立ったことがあります。
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2005年04月05日

自閉症と消化酵素

グルテンやカゼインを含む食品を除去するダイエットで一部の自閉症児に症状の改善が見られることを裏付ける研究は何十年もの歴史があり、ドナ・ウィリアムズさんのようにそういう除去食を続けている人たちもいます。90年代になり、こういう食事療法で効果がある理由の一つとして、消化酵素の不足が指摘されるようになりました。

天然の植物から抽出した酵素を適切に配合し、ダイエットの代わりになる補助食品の開発に成功したのはデヴィン・ヒューストン先生 (Ph.D) でした。二つの集団を比較するような実験報告はありませんが、これらの酵素は通常の食品に比べても危険の少ない商品なので、様子を見ながら試してみる家族が米国で増えています。PDDやアスペルガーなど、軽度のお子さんたちの中には、こういった酵素でダイエットを卒業できたと言っている例もあります。現在、ヒューストン社の酵素は、ほとんどがサプマート社を通して日本語で注文することができます。



酵素を飲み始めると、なぜか尿ペプチド検査の結果が不正確になります。検査は前もってしておきましょう。

ペプチドに異常が見られたばあい、これらの原因となるグルテン・カゼイン・大豆蛋白を完全に分解してくれるのがペプチザイドです。

ペプチザイドに含まれるパパイヤ酵素で調子がおかしくなる子もいることが分かり、その代わりとして開発されたのがAFPペプチザイドです。粉末や、お菓子感覚で食べられるチュアブル・タブレットもあります。

トマトやピーマンなど、色の濃い野菜や果物を食べるとケタケタ笑ったりするお子さんはフェノールなどの色素を含む成分をうまく分解できないようです。こういう成分を完全に消化できるのがノー・フェノールです。

ノー・フェノールは、就寝前など、食事の時間から離して摂取することで、有害なイースト菌を弱らせる作用もあるようです。

小麦を除去することで症状に改善の見られるお子さんの中には、グルテンなどのタンパク質のほかに炭水化物を分解する酵素が不充分なお子さんもいます。そういうばあい、炭水化物の分解を完全にするザイム・プライムが効果的なこともあります。ザイム・プライムのチュアブル・タブレットが最近開発されました。これはまだサプマートで扱っていないので、ヒューストン社に直接注文する必要があります。



ダイエットに興味はあるけれど大変そうで二の足を踏んでいるというかたは、こういう酵素を試してみても良いと思います。ただし、アレルギーなどがあるばあい、酵素と平行して、やはり特定の食品を除去した方が改善が見えるお子さんもいます。
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2005年04月04日

ABA: ロヴァス式早期集中行動介入の成果

自閉症児の教育方法として米国では定番になっている早期集中行動介入に対して賛否両論があっても良いですが、日本で出版されている書籍などを拝見するとまだまだ初歩的な誤解が沢山あります。実際にどういう成果が上がったのか、基本的なことを復習しておきましょう。

1970年代から80年代にかけてO・I・ロヴァス博士 (Ph.D) たちがUCLAで行なった実験では、連邦政府の研究資金が交付されたので、理想的な条件で早期集中行動介入を実施できました。最初の予定では被験者を無作為抽出で二つの集団に分け、一つは実験の効果を最大限にした実験群、もう一つは効果を抑制した抑制群 (control group) として結果を比較する予定でしたが、親としては自分の子が抑制群に振り分けられることを望みません。それで親たちが連邦政府に直訴しました。人道的な理由で、無作為抽出を行なうなら資金を交付しないと政府機関から通告されたロヴァス博士は、やむおえず別の方法で被験者を二つの集団に分けました。UCLAの近くに住んでおり、親も本気で取り組む意志があることを約束した20人を実験群、それ以外を抑制群としたのです。

最重度の子どもたちは、自閉症以外の困難を併発している可能性があるという理由で実験から除外されました。当時の診断基準で自閉症とは別だったアスペルガー症候群の子どもたちも入っていません。開始前の時点での平均IQは、実験群が63、抑制群が60でした。(非公式な話ですが、抑制群にレット症候群のお子さんが入っていたことが、あとで判明したようです。)

63という平均IQはやや高めかも知れません。検査をするときは、大人の指示に従ったら褒美をあげて強化するということを徹底して、能力を充分に引き出すようにつとめたとロヴァス博士は言っています。その分、介入前と介入後の差は小さくなるはずとも言えます。

実験群には週35から40時間の訓練が行なわれました。親が中心になって取り組み、複数の学生セラピストが交代で子どもの相手をし、大学院の修士課程を優秀な成績で終了した年長セラピストが毎日のように家庭訪問して進行状況を確認し、臨床班の会議が毎週ひらかれました。集中というのは単に時間が長いという意味ではなく、内容も集中的なのです。

抑制群は親勉強会だけで訓練時間も常識的な範囲、セラピストの派遣も無かったようです。

実験群20人のうち19人が残り、平均IQは20上昇しました。最も劇的に伸びた9人 (47パーセント) の平均IQは37上昇し、この子たちは過去の診断歴を隠して小学校の普通学級に入学し、最初の一年間を問題なく良い成績で終えました。もう一歩だった子どもたちの一人はその後に伸びて普通学級入りし、短大に進学しました。ここまでの成果は度重なる審査と議論を経てJournal of Clinical and Consulting Psychology に掲載されました(Lovaas 1987)。

正常機能を獲得した9人のうち一人は、IQが高くても風変わりな行動が増えてしまい、その後、特別学級に移動しました。それ以外の8人は小学校卒業まで問題なく過ごし、成績も良好、IQやさまざまな心理試験でも正常範囲、二重盲験でマジック・ミラー越しに大学院生が観察しても普通の子と見分けがつかなかったそうです。ここまでの成果は論文として American Journal on Mental Retardation に掲載されました(McEachin, Smith, & Lovaas, 1993)。この論文は巻頭特集のような扱いで、リチャード・フォックス博士やG・B・メジボヴ博士をふくむ何人かの有名な専門家によるコメントと、それに対するロヴァス博士たちの回答もついています。ショプラー博士や日本の先生がたなどがロヴァス式ABAを批判するとき、この論文は黙殺されることが多いです。

ABAに肯定的な英国のリッチマン先生が書いた本などでも、これらの論文に関する記述は間違っています。初期の失敗例を報告した73年の論文が早期集中介入の論文であるかのように書いてあります。日本語版の監修を勤めた先生がたも原書の間違いを指摘するようなことはなさらなかったらしく、そのままになっています。93年の論文は、ロヴァス式の効果が定着しないと言う「定説」に対する反証として、米国では親でも読んでいる基本文献で、日本語訳も出ているはずです。

成人期の追跡調査も行なわれましたが、正式の論文として発表されたかどうか僕は記憶していません。リムランド博士のニューズレターによると、回復 (recovery) を成し遂げた8人は依然として普通の成人と見分けがつかないそうです。小学校の途中で特別学級入りした一人は未だに行動上の問題を抱えていますが、自閉症の診断基準からは外れたそうです。

8人の中で最も劇的に伸びたドゥルー・クラウダー君 (仮名) は大学へ入学しました。お母さんの体験記が出版され、巻末には彼の作文も載っています。もう一人、ロバート・スミスさんはガラスはめこみ職人という危険な仕事をしておりBBCの特集に出演したので皆さんもご存じですね。

以前にも述べたことですが、ABAによる教育的な介入で能力を伸ばし、自閉症を克服した例を回復 (recovery) と呼びますが、これは医学的な意味で言う完治 (cure) とは違います。ロヴァス博士は "cure" という単語を絶対に使わないし、使うべきでないと言っています (Lovaas 2003, p. 393)。

「集中」と言うばあい、その内容も重要です。教科書として使われてきたミーブックを親たちが読んだだけで行なう介入や、ロヴァス門下の専門家による講習を受けただけではUCLA型の集中介入と言えないそうです (Lovaas 2002, p 399)。

参考資料

Lovaas, O. I. (1987). "Behavioral treatment and normal educational and
  intellectual functioning in young autistic children."
Journal of
  Consulting and Clinical Psychology
: 55. Pp. 3-9.
Lovaas, O. I. (2003.) Teaching Individuals with Developmental Delays:
  Basic Intervention Techniques
.
Austin: Pro-Ed.
McEachin, J. J., Smith, T., & Lovaas, O. I. (1993). "Long-term outcome for
  children with autism who received early intensive behavioral treatment."

  American Journal on Mental Retardation: 97.4. Pp. 359-372.
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posted by iRyota at 20:36| Comment(1) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月03日

Autism Europe: 欧州の自閉症団体

ヨーロッパ各国にある自閉症者と家族の団体を取りまとめる役割で活動している非政府団体 (NGO) が Autism Europe [オーティズム・ヨーロッパ] 通称AEです。連絡先はベルギーのブリュッセルです。

ネット上の頁には仏語と英語の情報が公開されており、仏語の情報には仏国旗トリコロールが、英語の情報には英国 (連合王国) の国旗ユニオンジャックが掲げてあります。

自閉症者[と]家族の生活を質的に向上させることが主目的で、30カ国77団体の仲を取り持ちます。30のうち14カ国は欧州連合 (EU) の加盟国です。3年に一度、自閉症に関しては世界最大規模の国際大会を開きます。心身に困難のある人たちや、そういう人を支援する80の団体からなる European Disability Forum [欧州心身不自由フォーラム] を創設した団体の一つでもあります。

まぢかにひかえた予定としては、2005年5月にスペインのマドリッドで開かれる第4回国際自閉症シンポジウムに協力します。

posted by iRyota at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 総合 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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